
栃木県・那須塩原市の地方競馬教養センターでは、未来のジョッキーたちが2年間、厳しい訓練と規律ある生活を送っている。早朝からの馬の世話や体重管理など過酷な環境の中で育てられるのは、“勝てる騎手”ではなく「誰からも愛される騎手」。現地取材を通して、その実態と理念に迫った。[4/5ページ]
変わりゆく志望者と、現代の課題
叱られ慣れていない子が増えている
近年、志望者の傾向にも変化が見られる。
「かつては競馬関係者の子どもが多かったですが、今は一般家庭の出身者がほとんどです」
しかし、裾野が広がる一方で、現代特有の課題も浮かび上がっている。
「叱られ慣れていない子が増えていると感じます。ただし、必要な厳しさについては理解した上で入所してきます」
命に関わる仕事である以上、曖昧な指導は許されない。
「危険なことは危険だと、はっきり伝えなければいけない場面もあります」
特に、緊急性の高い場面では、即座に伝えなければならない。そうした状況では、教官も言葉を選ぶ余裕がない場合があるという。
騎手不足という現実と育成の意義
質と量の両立
現在、地方競馬は(競馬場によっては)騎手不足という課題に直面している。
「各競馬場が候補生を確保しようと動いている状況です。それだけ人材が不足しています」
今後も人材不足が続けば、レース開催そのものに影響を及ぼしかねない。
そうした中で、教養センターの役割は一層重要性を増している。
「一定レベルの騎手を安定的に送り出すこと。それが今求められています」
単に人数を確保するだけではなく、現場で通用する確かな技術と人間性を備えた騎手を育て続けること。その質と量の両立こそが、これからの地方競馬を支える基盤となる。
教養センターには、即戦力となる人材の輩出と同時に、長く信頼され続ける騎手を育てるという、より高度な役割が求められている。


