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騎乗訓練を終え、厩舎へ戻る
騎乗訓練を終え、厩舎へ戻る

栃木県・那須塩原市の地方競馬教養センターでは、未来のジョッキーたちが2年間、厳しい訓練と規律ある生活を送っている。早朝からの馬の世話や体重管理など過酷な環境の中で育てられるのは、“勝てる騎手”ではなく「誰からも愛される騎手」。現地取材を通して、その実態と理念に迫った。[3/5ページ]

「経験者が有利とは限らない」理由

本当に必要な技術とは?

騎乗経験の有無は、必ずしも有利・不利を決めるものではないという。

「経験者でも癖がついてしまっていると、かえって伸び悩むことがあります。一方で、未経験者は素直に吸収できる傾向があります」

入所時に見られた差は、訓練を重ねる中で徐々に縮まっていくケースも少なくない。

では、騎手にとって本当に重要な技術とは何か。

「一番大事なのは“軸”です。体幹とバランス。そこがぶれると、馬に負担をかけてしまう」

トップレベルの騎手でもこの考え方は共通している。
現在JRAに所属している岩田康誠騎手も、候補生時代からバランスの良さについて教官から高い評価を受けていたという。

「どれほど優れた騎手でも、基本は同じです。安定して乗れるかどうか、それが大前提になります」

華やかな勝利の裏にあるのは、徹底して積み重ねられた基礎である。日々の反復と地道な鍛錬によって培われた安定感こそが、結果に結びつく。

成長を分けるのは「向上心」と「愛馬心」

日々の何気ない所作や積み重ねが信頼につながる

技術以上に、成長に大きく影響するのは人間性である。

「向上心のある子は明らかに違います。吸収しようとする姿勢が、そのまま態度に表れる」

実際、戸崎圭太騎手も教養センターにいた時代からそうした姿勢があり、教官の印象に残る候補生の一人だったという。

「結果として可愛がられるようになります。デビュー後は、それが騎乗機会の増加につながり、さらなる成長に繋がります」

細やかな部分も必ず誰かが見ている

もう一つ重要な要素が、「愛馬心」だ。

「馬は機械ではなく、生き物です。能力を引き出すためには、人馬一体の関係が必要不可欠です」

例えば、餌の与え方一つにも差が生まれる。そうした細やかな気配りが、信頼関係の構築につながる。

「そうした細かな部分ができているかどうかは、必ず誰かが見ています」

日々の何気ない所作や積み重ねは、すぐに結果として現れるものではない。しかし、そうした姿勢は確実に周囲に伝わり、やがて信頼として返ってくる。

そしてその信頼が、騎乗の機会や新たな役割へとつながり、騎手としての成長を後押ししていく。

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