騎手を養成する「地方競馬教養センター」の実態。“技術”より大切なものを叩き込まれる2年間

地方競馬教養センターの現場に迫る
栃木県・那須塩原市にある地方競馬教養センター。ここでは、未来のジョッキーたちが2年間にわたり、厳しい訓練に身を置いている。
早朝から始まる馬の世話、徹底した体重管理、規律ある集団生活。自由時間は限られ、候補生の中には「想像を遥かに超える厳しい環境だ」と吐露する者もいる。
しかし、この場所で育てられているのは、単なる“勝てる騎手”ではない。
「誰からも愛される騎手」——それが、この教養センターで繰り返し説かれる理念だ。
今回、現地でのインタビューを通して、騎手養成の実態と、その根底にある考え方に迫った。[1/5ページ]
騎手養成の役割と「人格」を重視する理由
最も重要なものは、「技術」ではない
地方競馬教養センターは、地方競馬全国協会の組織の一つとして、主に騎手および調教師の養成と、主催者職員の研修を担っている。
「裁決委員や発走委員といった、競馬の公正を支える専門職員の教育も行っています。ただ、やはり年間を通じて中心になるのは騎手の養成です」
騎手養成は昭和37年から続く中核事業であり、現在も変わらず継続されている。
では、その騎手育成において最も重要なものは何か。
答えは意外にも、「技術」ではなかった。
「技術や知識の習得は当然必要です。ただ、それ以上に重視しているのは人間性です。誰からも愛される存在であること、信頼される存在であることが重要です」
その中で繰り返し語られたのが「礼節」という言葉だった。
騎手という職業は、他のスポーツとは大きく異なる側面を持つ。自分の力だけで完結する競技ではなく、「乗せてもらう」ことで初めて成り立つ。
「どれだけ技術があっても、信頼されなければ騎乗の機会は得られません。そのためにはまず人としてのあり方が重要になります」
実際、候補生たちに将来像を聞くと、「信頼される騎手」「関係者から愛される騎手」といった言葉が多く挙がる。こうした価値観は、日々の教育の中で自然と根付いている。


