
こうした日々を過ごす中で、騎手候補生たちは何を感じ、どこを目指しているのか。ここからは、実際に取材した候補生たちの声を紹介する。すでにデビューを果たした107期生と、これからプロの舞台を目指す108期生。それぞれの立場から語られる言葉には、その先にある覚悟がにじむ。[3/4ページ]
※本取材は2026年3月に実施。記事内の内容は取材時点のもの。
騎手候補生インタビュー②
【後藤武蔵】(ごとうむさし・107期生)

「乗り鞍をつかみ、佐賀を代表する騎手へ」
佐賀競馬場でデビューした後藤武蔵は、広島県出身。広島には近くに競馬場がないため、地理的な近さも含めて佐賀を選んだ。
さらに、新人騎手でも乗り鞍に恵まれ、早い段階から活躍できるチャンスがあることも理由の一つだ。
目標にしているのは、佐賀の飛田愛斗騎手。参考にしたいのは騎乗技術だけではない。
「調教師さんと良好な関係が築けているというか、色々な方に愛されるキャラであるところも、見習っていきたいです」
教養センターで楽しかった思い出として挙げたのは、旅行や餅つき、誕生日会といったイベントだ。この取材前日には誕生日会があり、夕食にケーキとジュースが出るなど、普段とは少し違う時間を楽しんだという。
一方で、もっとも辛かったのは入所して最初の1か月。ホームシックもあり、慣れない訓練も厳しかった。なかでも、鎧なしでずっと馬にまたがっている「鎧上げ」の訓練が一番しんどかったと振り返る。
「まずは1鞍でも多く騎乗依頼をいただけるように、関係者の方々との信頼関係を築いていきたいです。将来的には、重賞を勝ち佐賀競馬場を代表するようなジョッキーになりたいです」
与えられた環境で待つのではなく、自らチャンスを取りにいく。
後藤武蔵は、その覚悟を持ってプロの舞台に立った。
【南部楓馬】(なんぶふうま・107期生)

「信頼を積み上げ、その先にリーディングを見据える」
兵庫県・園田競馬場でデビューした南部楓馬は、滋賀県生まれ。
進路を選ぶうえで重視したのは、家族が応援に来やすい環境だった。地元に近い場所で走ること。その選択には、支えてくれる存在を大切にしたいという思いがある。
目標にしている騎手は、JRAの岩田望来騎手。地方競馬では山本咲希到騎手の乗り方も参考にしているという。特に注目しているのは、馬に乗っている時の姿勢だ。
「すごく安定した姿勢で乗られているので、自分もあんな風に乗ることができたら、と思っています」
デビューしてからまず目指すのは、関係者から信頼される騎手になること。その先の最終目標として、所属厩舎とともにリーディングを取れる騎手になりたいと語る。
具体的に勝ちたいレースはまだ定まっていないが、「リーディングを取れるレベルに達すれば、自然と重賞にも手が届く」そう冷静に捉えている。
教養センターでの生活を振り返ると、「キツかった思い出の方が多い」と率直に語る。中でも印象に残っているのは、1年目の夏。先輩たちが実習に出て、自分たちだけで回すことになった時期だった。訓練に加えて作業の負担も一気に増え、最も厳しい時間だったという。
それでも、2年目になると環境は変わる。模擬レースが始まり、同期と競い合うことに楽しさも感じるようになった。そして、その同期に対する思いも率直だ。
「ライバルではあるんですけど、みんな本当に頑張っているので、自分はもちろんなんですけど、できればみんな活躍してほしい気持ちはありますね」
信頼を積み重ね、その先で結果をつかむ。
南部楓馬は、その決意とともにプロの世界に飛び込んだ。


