【柴田善臣とコンビを組んだ名馬5選】42年の騎手人生に幕…涙のGⅠ初制覇から代打での“9cm差”激闘まで

■柴田善臣とコンビを組んだ名馬5選
1985年のデビューから42年。昭和、平成、令和と3つの時代を駆け抜けた柴田善臣騎手が、2026年9月18日をもって現役生活に幕を下ろした。
JRA通算2341勝、重賞96勝(うちGⅠ9勝)を挙げ、長年にわたり関東を代表する名手として活躍した。今年7月には60歳を迎えたが、右肩の負傷による休養から復帰はかなわず、鞭を置く決断を下した。
42年目に及ぶ騎手生活の中で、数多くの名馬とコンビを組み、ファンの記憶に残る名勝負を繰り広げてきた柴田騎手。今回は彼の42年に及ぶ騎手人生を振り返り、特に印象的な活躍を見せた5頭を紹介していく。[1/5ページ]
■ オフサイドトラップ

1998年の天皇賞(秋)を制したオフサイドトラップ。このレースといえばサイレンススズカが故障した悲劇の印象が強いかもしれないが、勝ち馬であるオフサイドトラップもまた、幾度もの困難を乗り越えてGⅠタイトルを手にした不屈の名馬だった。
4歳時から高い能力を示していたオフサイドトラップは、皐月賞でナリタブライアンの7着、日本ダービーでは8着とクラシックにも出走。しかし、その年の夏に屈腱炎を発症し、長い故障との闘いが始まった。
同年末に復帰し、翌1995年2月にはオープン特別を勝利したものの、その後に再び脚元が悪化。さらに長期休養を挟んで復帰したかと思えば、わずか1戦で再び戦線を離脱するなど、なかなか順調にレースを使うことができなかった。
競走馬にとって屈腱炎は長期間の休養を経て復帰できたとしても再発のリスクがつきまとう、非常に厄介な怪我である。ましてや、一度ならず何度も症状が悪化していたオフサイドトラップは、現役生活を続けること自体が容易なことではなかっただろう。
それでも陣営は諦めなかった。何度も長期休養を挟みながら少しずつ復帰への道を探り、1998年、ようやくその努力が実を結び始める。
この年の春はオープン特別で好走を続け、夏には七夕賞で初の重賞制覇を達成。続く新潟記念も制して重賞連勝を飾り、ようやく素質が開花した。故障に苦しみ続けた馬が8歳にして重賞を連勝したのだから、その復活ぶりには目を見張るものがあった。
そして迎えた天皇賞(秋)。鞍上には柴田善臣騎手を迎え、6番人気の評価で大一番に臨んだ。
だが、このレースには単勝1.2倍という圧倒的な支持を集めていたサイレンススズカが出走。スタートから後続を大きく引き離して逃げたが、3コーナー過ぎに故障を発生し、競走を中止するという悲劇が起こってしまう。
一方、オフサイドトラップは好位でじっくり脚を溜め、最後の直線で先頭へ。そのまま追い込んできたステイゴールドを1馬身1/4差抑え、初めてのGⅠ制覇を果たした。
この勝利により、オフサイドトラップは当時の天皇賞史上最高齢となる8歳での優勝を達成。屈腱炎によって何度も競走生活を中断しながら、ついには競馬界の頂点に立ってみせたのである。
なお、柴田騎手にとってオフサイドトラップとのコンビは、この天皇賞(秋)が最初で最後となるたった一度の騎乗で、競走馬としての集大成とも言えるレースを勝利へ導いたその手腕は見事だった。
もちろん、同競走で起こってしまった悲劇を忘れることはできない。だが、オフサイドトラップ自身が積み重ねてきた苦難や、それを支え続けた陣営の努力もまた、競馬史に刻まれる復活劇ではないだろうか。
※本文中の馬齢は、当時の旧馬齢表記に基づいています。


