
昭和、平成、令和と3つの時代を駆け抜けた柴田善臣騎手が、2026年9月18日をもって現役生活に幕を下ろした。42年目に及ぶ騎手生活の中で、数多くの名馬とコンビを組み、ファンの記憶に残る名勝負を繰り広げてきた柴田騎手。今回は彼の42年に及ぶ騎手人生を振り返り、特に印象的な活躍を見せた5頭を紹介していく。[4/5ページ]
■柴田善臣とコンビを組んだ名馬5選
■ ジャスタウェイ

ジャスタウェイにとって初めてのGⅠ制覇となった2013年の天皇賞(秋)は福永祐一騎手とのコンビ。さらに翌年のドバイデューティフリーでも福永騎手を背に圧勝し、日本調教馬として初めて世界ランキングの単独1位に輝いた。
当然ながら、帰国初戦となる安田記念でも福永騎手が手綱を取ると考えられていたが、ここでアクシデントが発生。福永騎手が騎乗停止処分を受け、騎乗できなくなってしまったのである。
そこで白羽の矢が立ったのが柴田善臣騎手だった。実は柴田騎手とジャスタウェイを管理する須貝尚介調教師は、競馬学校騎手課の第1期生という同期の間柄。
さらに、柴田騎手にはジャスタウェイへの騎乗経験もあり、2012年と2013年の毎日王冠では、ともに2着に導いていた。急きょ決まった代打騎乗とはいえ、馬の特徴を知るベテランへの乗り替わりは、陣営にとっても心強かったことだろう。
しかし、この年の安田記念は出走17頭中9頭がGⅠ馬という非常に層の厚いメンバーが顔を揃えていた。しかも、この日の東京競馬場は小雨が降り、芝コースは不良馬場。普段のような瞬発力勝負とは異なり、各馬が走りづらそうにするほどタフなコンディションとなっていた。
それでもジャスタウェイは、世界ランキング1位という実績もあって単勝1.7倍の圧倒的な1番人気。急きょ任された代打騎乗で世界ランキング1位の馬を勝利へ導くという大役だったが、柴田騎手はレース後、意外にも緊張はあまりなかったと振り返っている。
レースでは中団よりやや後方に控えて脚を溜め、直線に向くと馬群の間から進出するが、ジャスタウェイは馬場に何度も脚を取られたか、なかなか思うように加速することができない。それでも柴田騎手は諦めず、相棒を懸命に追い続けた。
そして内から少しずつ差を詰めると、先に抜け出していた16番人気のグランプリボスとの激しい叩き合いに持ち込む。最後の最後までどちらが勝つか分からない接戦となったが、ゴール直前でジャスタウェイがわずかに前へ。結果はハナ差、約9cmという僅差で勝利を収めた。
レース後、柴田騎手はジャスタウェイについて、普通の馬なら走るのを諦めてしまってもおかしくないほど何度もバランスを崩していたと振り返っている。それでも勝ち切ってしまうあたり、やはり世界ランキング1位の実力は伊達ではなかったということだろう。
この勝利は、柴田騎手にとってJRA・GⅠ通算9勝目にして、現役最後のGⅠ制覇となった。しかも、キャリアを通じて唯一となる1番人気馬でのGⅠ勝利でもあった。
ジャスタウェイはこの年の年間レーティングでも130ポンドの高い評価を受け、日本競馬史に名を刻んだ。そして、世界的名馬が手にしたGⅠタイトルの一つが、柴田善臣騎手とのコンビによるものだったことも、忘れてはならない。


