【マイルCS 有力馬診断】安定勢力vs新興勢力、ブレイディヴェーグが勢力図を塗り替える可能性は?
11月17日、京都競馬場にて行われるG1マイルチャンピオンシップに向けて、『競馬の教科書(オーパーツ・パブリッシング)』の著者・玉嶋亮がXアカウントで有力馬の評価を行っている。この記事では、◎候補と△候補に分けて各馬を分析し、マイルチャンピオンシップの行方を占う。
◎候補馬(軸候補)
セリフォス
昨年のマイルチャンピオンシップ以降、気性的な難しさも影響してか、やや物足りない成績が続いているが、本来の能力を考えればトップクラスの実力を持つ。昨年の安田記念ではソングラインやシュネルマイスターと互角の勝負をしており、能力全開で走れば実力は折り紙付き。追い込みが決まる展開になれば、まとめて差し切ってもおかしくはない。
ソウルラッシュ
富士Sでは、ジュンブロッサムに先着を許したものの、斤量プラス1kgのハンデがあった。また、直線では狭いところを抜けてきた分、ジュンブロッサムよりスムーズさを欠いたため実力的には互角と言っていい。レベルの高かった安田記念も能力を出し切っての3着で、マイル路線では出力のムラがない優等生タイプだ。安定勢力なので、まともに走れば上位進出できる。
ナミュール
今年の安田記念ではSペースの前残り展開を外から差し切り、ソウルラッシュに先着。昨年のマイルチャンピオンシップでは目の覚めるような末脚で大外一気を決め、最大出力を更新した。マイル路線の勢力図が大きく変わっていない今年、ナミュールは引き続き有力候補の1頭だ。新興勢力であるブレイディヴェーグは強力だが、最有力候補の1頭であることは間違いない。
ブレイディヴェーグ
昨年のエリザベス女王杯を古馬初挑戦で完勝し、その内容も圧巻だった。G1初挑戦で見せたパフォーマンスは高く評価できる。番付は「関脇」、MI値は84ptと非常に高く、牡馬の中距離別定G2でも好走可能な水準だ。今年のマイル路線は過渡期にあるため、ブレイディヴェーグが勢力図を一気に塗り替える可能性も十分にある。
△候補馬
ウインマーベル
スプリント路線で重賞を3勝しているG1級の実力馬だ。競馬の上手な馬で、内に潜り込んで早め先頭から押し切りを狙うパターンに持ち込めれば好走の可能性はあるが、勝ち切るのは厳しいだろう。スプリントからマイルへの距離延長は、壁が高い。
エルトンバローズ
毎日王冠では外枠から先手を取る競馬で3着にまとめ、中京記念では早め先頭から押し切りを狙うも3着に敗れたが負けて強しの内容だった。展開が向けば粘り込みが期待できる1頭だが、G1の舞台で勝ち切るにはあと一歩足りないか?
オオバンブルマイ
キーンランドカップでは最後方から驚異的な追い込みで3着に滑り込んだ。国内のマイル戦では一線級に通用するか疑問は残る。展開がハマれば上位進出の可能性もあるが、先行争い激化に加えて、差しが決まりやすいトラックバイアスにも大きく恵まれる必要があるだろう。
ジュンブロッサム
富士Sではソウルラッシュを外から捕らえて快勝。斤量で1kgハンデをもらっていたことを考慮すると、ほぼ互角の内容だった。G1初挑戦となるが、混戦模様の今年のマイル戦線では新星として台頭する可能性は十分にあるだろう。
チャリン
QE2(英アスコット)では、ドバイターフの勝ち馬であるファクトゥールシュヴァルを沈めている。実績は申し分ないが、安田記念を圧勝したロマンチックウォリアーとは背景が異なり日本の高速馬場への適性が未知数だ。欧州最強マイラーであること自体は評価しつつも、その実績ほど走るかは蓋を開けてみないと不明だ。人気がなければ最終予想で押さえ程度の印を回す。
フィアスプライド
ヴィクトリアマイル2着は、他馬の不発に助けられた感があるが、器用な競馬が得意なタイプ。立ち回り次第では好走の可能性もあるが、勝ち切るのは難しいか?
マテンロウスカイ
中山記念は展開に恵まれた感が強い。天皇賞(秋)もメンバーレベルを考えれば5着は大健闘だが、前残りの恩恵を受けた結果で着順ほどの価値はない。ただ、マイルCSでも前残りの展開になれば好走が期待できる水準の能力は持っている。
【了】
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<プロフィール>
玉嶋亮(たましま・りょう)
1985年生まれ。本業を抱え時間の制約があるため、芝オープンクラスのみにフィールドを限定している。「能力比較」「馬場読み」を中核のファクターとして、パドックや追い切り等は一切見ないスタイル。2021年凱旋門賞の単勝万馬券、2022年AJCCの三連単288万円等の的中実績がある。「単勝多点」「変則フォーメーション」「複勝チャレンジ」等多彩な馬券術に定評があり、設計回収率=130%を公言し、累計回収率=148%を記録している。旧作「競馬の教科書(ピンク本)」は、個人出版ながら異例の大ヒットを記録し、2022年11月にベストセラーの座を譲らないまま絶版した。2024年10月に新著『競馬の教科書 秋G1特別増刊号』を刊行。アマチュア最強の予想屋、日本一の競馬作家になるのが目標。
▼競馬の教科書シリーズ▼
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