
競走馬は、引退したあとどこへ行くのか。
現役生活を終えた競走馬たちの未来に向き合い、新たな価値を生み出そうとしているのが「TCC Japan」だ。今回は代表の山本高之氏にインタビューを実施。引退競走馬支援への思いや活動の歩みについてうかがった[3/3ページ]
現実としての課題
一方で、活動を続けていくうえでは現実的な課題もある。
「一番は資金ですね」
馬を繋養し続けるためには、施設の維持管理や人件費、飼料代など多くの費用が必要となる。
さらに物価上昇の影響もあり、その負担は年々大きくなっている。
「人手の問題もありますが、結局は資金に紐づいています」
理想と現実。活動を継続していくためには、やはり安定した資金確保が欠かせないという。
会員の拡大に向けては、SNSでの情報発信や口コミを中心に取り組んでいる。
また、2025年4月にオープンした「メタセコイアと馬の森」(滋賀県高島市)は、馬に馴染みのない人々が馬と出会い、その魅力や存在価値に触れる入り口として機能している。

少しずつ、だが確実に変わってきたもの
この10年で、引退競走馬を取り巻く環境には少しずつ変化が生まれているという。
「競馬場での反応は明らかに変わってきています」
以前は素通りされることも多かったイベントブースに立ち寄る人が増え、寄付やグッズ購入など具体的な支援につながるケースも増えてきた。
「“引退競走馬”という言葉自体は、かなり認知されてきたと感じています」
劇的な変化とは言えないかもしれない。それでも、小さな積み重ねが着実に広がっていることを、山本氏は実感していた。
「競走馬としての現役生活が終わったとしても、次のステージがあるべきだと思っています」
まずは関心を持つこと。それが引退競走馬を取り巻く環境を変える第一歩になる。

その先をどうつくるか
TCC Japanが目指しているのは、単なる保護活動ではない。
馬が持つ価値を社会の中で再発見し、新たな役割や活躍の場を生み出していくことだ。
「馬の社会的価値を高めていきたいと思っています」
競走生活を終えた馬たちの未来は決して一様ではない。だからこそ、馬が人間社会にとって価値ある存在だと認識されれば、引退後の選択肢や居場所も自然と広がっていくはずだ。
山本氏が目指しているのは、そうした社会の実現である。
今回のインタビューを通じて見えてきたのは、競走馬の命がゴール板を過ぎた先にも続いているという事実だった。
“その先”をどのようにつくっていくのか。
TCC Japanの取り組みは、引退競走馬と私たちの関わり方、そして馬と人が共生する社会のあり方を改めて問いかけている。
【TCC Japan】
2015年設立。引退競走馬のセカンドキャリア支援をはじめ、馬と人が共生する社会づくりを目指したさまざまな事業を展開。「馬とともに社会をゆたかに」を理念に活動している。
【取材先リンク】
・株式会社TCC Japan 公式ホームページ
・観光養老牧場「メタセコイアと馬の森」公式ホームページ
【了】
(文●競馬チャンネル編集部)
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