
競走馬は、引退したあとどこへ行くのか。
現役生活を終えた競走馬たちの未来に向き合い、新たな価値を生み出そうとしているのが「TCC Japan」だ。今回は代表の山本高之氏にインタビューを実施。引退競走馬支援への思いや活動の歩みについてうかがった。[2/3ページ]
“資源”としての馬に気づいた瞬間
「栗東には、こんな大きな地域資源があるのに、活かされていないんじゃないか」
さまざまな地域を訪れ、多くの人と交流する中で、山本氏はそう考えるようになったという。
馬は、ただ走るためだけの存在ではない。地域にとっても、人にとっても、もっと多様な関わり方があるのではないか。
そんな視点から、山本氏は次第に馬との関わりを深めていった。
引退競走馬との出会い
活動の出発点は、ホースセラピー事業への関心だった。
事業化に向けて準備を進める中で各地の現場を訪れるうちに、馬を取り巻くさまざまな課題が見えてきたという。
その中で、自然と意識するようになったのが、「馬の福祉」という視点。
「馬と関わる以上、そこには向き合わなければいけないと思いました」
栗東という土地には、多くの競走馬が集まり、トレーニングを重ね、そして数年後には引退していく現実がある。
そうした環境の中で育った山本氏にとって、引退競走馬というテーマに向き合うことは、ある意味で必然だったのかもしれない。

小さなスタート
活動の立ち上げにあたり、最も大きな課題は何だったのだろうか。
「まず場所ですね」
馬を扱うためには広い土地が必要であり、法的な制約もある。当時は馬に対する理解も十分とは言えず、活動への協力を得ることも容易ではなかった。
そうした中でたどり着いたのが、築100年を超える古民家。ただし、受け入れには一つの条件があった。
「馬を敷地から、一歩も外へ出さないこと」
小さなスペースとポニー2頭。TCCの活動は、そこから始まった。

1頭の馬が残したもの
これまで繋養してきた馬の中で、特に印象に残っている一頭について尋ねると、
「1頭に絞るのは難しいですね」
そう前置きしたうえで名前が挙がったのが、パフォーマプロミスだった。
現役時代に重賞3勝を挙げた同馬は、大きな怪我を負い、約1か月にわたって闘病を続けた。
「かなり厳しい状況でした。それでも生きようとしていたんです」
その姿には多くのファンから応援が寄せられたという。
パフォーマプロミスの存在は、多くの人に競走馬の命の重みや、引退後も続く馬たちの人生について考えるきっかけを与えた。


