
アスリートにとって、長く第一線で活躍し続けることは容易ではない。競馬界の騎手も例外ではなく、肉体的な衰えや若手の台頭、環境の変化といった壁が常に立ちはだかる。
本稿では、JRA所属の経験を持ち、さらに各所属地域においてリーディングジョッキーの座に輝いた実績がある、55歳以上の現役騎手5名を紹介する。[4/5ページ]
④柴田善臣
■59歳(※2026年1月29日現在)
生年月日:1966年7月30日
デビュー:1985年
出身地:青森県
所属:美浦
表彰歴:JRA関東リーディング3回
2026年1月現在、JRA所属のジョッキーとしては最年長である柴田善臣騎手。2026年の7月30日をもって還暦を迎えるため、もしその時点で現役であれば、中央競馬としては史上初の「還暦ジョッキー」が誕生する。
1985年にデビューした善臣騎手は、競馬学校の1期生として入学。それまでは馬事公苑の騎手養成課程を卒業した者が騎手としてデビューできるというルールだったため、彼は時代の転換点に立ち会った存在とも言えるだろう。
デビューから9年目の安田記念でヤマニンゼファーに騎乗し初のG1制覇を果たしてからブレイクし、以降関東リーディング3回を獲得。
キングヘイローやオレハマッテルゼ、オフサイドトラップなど、長く現役を続けた馬をG1タイトルにエスコートし、またナカヤマフェスタやジャスタウェイといった名馬を勝利へ導いたこともある。
これは善臣騎手に限った話ではないが、現役期間が長い分、数多くの優駿と一期一会の出会いをしている。
そんな善臣騎手の騎乗馬の中で特に印象深い馬を1頭挙げるとなった際は、重賞タイトルにこそ手が届かなかったものの、ルーベンスメモリーの名前を出す人も少なくないだろう。
2003年の夏、トレーニング中の負傷をきっかけとして右目の眼球を取り出すこととなり隻眼となったルーベンスメモリー。元々、条件戦ではゼンノロブロイの2着となるなど能力のあるところを見せていた同馬であったが、失明によって競走馬としての運命も危ぶまれてしまう可能性があった。
だが、手術を終え、競馬場に戻って来た彼の走りは、そのハンデをまるで感じさせないようなものだった。そして彼の手綱を取り続けた善臣騎手は、キャリア40戦のうち半分以上となる21戦に騎乗。
ルーベンスメモリーと共に準オープンを優勝した際は、「他の馬の騎乗依頼を断ってでもこの馬に騎乗した」という噂もあるほどだ。
2005年、自身8度目となる通算100勝に到達した際の相棒も、このルーベンスメモリーだった。彼がインタビューで語った「自分の100勝よりも、この馬の1勝の方を大事にしてあげたい」という言葉は、失明というハンデを抱えながらもレースに挑むサラブレッドの厳しさ、そしてその尊さを物語っている。


