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2023年有馬記念を制したドウデュース(中央)
2023年有馬記念を制したドウデュース(中央)

⑤2023年有馬記念(ドウデュース) 

~前残りの展開もなんのその…豪快なマクリで復活V~

 2022年のダービー馬ドウデュースにとって、4歳で迎えた23年は苦難の連続だった。始動戦の京都記念こそマテンロウレオ以下に圧勝したが、続くドバイターフはレース前日にハ行を発症し無念の取消。結局、上半期は1走のみに終わった。そして迎えた秋初戦はライバルの同期イクイノックスとの再戦。ダービー後は明暗を分けていた2頭だったが、ドウデュース陣営は挽回に燃えていた。

 しかし、レース当日に武豊騎手がまさかの負傷で戸崎圭太騎手に乗り替わると、レースでは末脚賦活で7着に敗退。秋2戦目のジャパンCも同コンビで4着と不完全燃焼のレースが続いた。

 ドウデュースに“ダービー燃え尽き症候群”の疑いも浮上する中、ケガから癒えた武騎手を再び鞍上に迎えたのが、秋3戦目の有馬記念である。1番人気こそ同期の菊花賞馬ジャスティンパレスに譲ったものの、ドウデュースは追い切りでも良化の気配を見せ、陣営も自信をのぞかせていた。

 そして迎えた大一番。ドウデュースと武騎手は、スタートのタイミングが合わず、後方からの競馬を強いられた。内枠を利してタイトルホルダーがハナを奪うと、大外枠のスターズオンアースがC.ルメール騎手の好判断で2番手に付けた。

 1周目のスタンド前。ドウデュースは場内から沸き上がる大歓声に一瞬、掛かりそうになる場面もあったが、百戦錬磨のレジェンドがなだめると、ピタリと折り合いをつけることに成功。この時すでに武騎手はドウデュースを後方馬群の外に持ち出していた。

 1000m通過60秒3の淡々としたペースを作り出したタイトルホルダーは、2コーナーを過ぎる頃には10馬身ほどの差を後続に付けていた。しかし、2番手以下は実質スロー。ドウデュースは3コーナーで8番手に位置を押し上げていたとはいえ、外々を回る距離ロスもあり、自慢の末脚が炸裂するかは定かではなかった。

 ところが、マクリ気味に進出したドウデュースは、4コーナーで早くも3番手。直線を向いて武騎手が右ムチを1発、2発と入れると、ドウデュースはこれに鋭く反応し、スターズオンアースとタイトルホルダーを交わし去り先頭でゴールを駆け抜けた。

 2着スターズオンアースとの差はわずか半馬身。しかし、着差以上の完勝だったことは、ゴールとほぼ同時に右手を突き上げた武騎手が一番わかっていただろう。

 空気の澄んだクリスマスイブの夕暮れ、中山競馬場は拍手喝采と歓声に包まれた。もちろんダブル主演を務めたのは、輝きを取り戻したドウデュースと武騎手であった。

【了】

(文●中川大河)

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