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この強さ、ヤバい…史上最強の菊花賞馬(4)圧倒的日本レコードを樹立!“早くて速い”戴冠劇

text by 中西友馬

牡馬クラシック三冠のひとつ、菊花賞。クラシックの最終戦であり、三冠レースの中で最も長い距離を走る舞台だ。スピードとスタミナの両方が求められるこのレースでは「最も強い馬が勝つ」と言われてきた。今回はその菊花賞で圧倒的な強さを見せつけた馬たちに注目し、着差やタイムの観点から特に“強さ”を感じた5頭を紹介する。今回は4頭目。

2014年菊花賞を制した時のトーホウジャッカル
2014年菊花賞を制した時のトーホウジャッカル

④2014年(勝ち馬トーホウジャッカル)

 次に紹介するのは、2014年の菊花賞。この年の菊花賞は、2025年現在も3000mの日本レコードとして残っている、3分01秒0という勝ち時計がマークされた。

 この「速い」タイムを叩き出したのは、デビュー149日での菊花賞制覇という「早い」記録も同時に更新した、トーホウジャッカルであった。

 この年の春2冠は上位拮抗で、皐月賞を制したのはイスラボニータ。ダービーでも2着に入り、同世代では頭ひとつ抜け出した存在であったが、セントライト記念快勝後は、天皇賞(秋)参戦を発表。そのため、菊花賞への参戦はなかった。

 そうなると、期待は必然的にダービー馬ワンアンドオンリーに集まった。秋初戦の神戸新聞杯も苦しみはしたが勝利で発進し、菊花賞でも1番人気に支持された。

 続く2番人気は、皐月賞2着のトゥザワールド。セントライト記念ではイスラボニータに完敗の2着も、イスラボニータ不在の菊花賞であれば、人気を集めるのは当然であった。

 そして続く3番人気と4番人気には、神戸新聞杯でワンアンドオンリーに肉薄した、トーホウジャッカルとサウンズオブアースが支持を受けていた。

 レースは、サングラスがハナを切り、トーホウジャッカルとトゥザワールドは好位から進める。ワンアンドオンリーとサウンズオブアースは、その後ろの中団グループにポジションを取る展開となった。

 レースが動いたのは3角手前。逃げていたサングラスを交わし、シャンパーニュが先頭に立ってペースが上がる。

 連れてマイネルフロストとトーホウジャッカルが2番手に上がり、その後ろをなぞるように内からサウンズオブアースも浮上。トゥザワールドとワンアンドオンリーは外を回って前を窺っていた。そのまま4角を回り、最後の直線へと向かう。

 直線に入ってすぐ、シャンパーニュを交わしてマイネルフロストが先頭に立つ。しかしそれも束の間、外からトーホウジャッカルがマイネルフロストを交わし、それを目がけて最内からサウンズオブアースが接近。

 残り200mからは一騎打ちの様相だったが、迫られてから再びグイッと伸びたトーホウジャッカルが半馬身振り切って勝利した。サウンズオブアースから3馬身半離れた3着にはゴールドアクターが入り、ワンアンドオンリーとトゥザワールドはそれぞれ9着、16着に敗れた。

 勝ったトーホウジャッカルがデビューしたのは、なんと日本ダービーの前日だった。デビューから149日での菊花賞制覇は、それまでの最短記録を更新した。さらに勝ちタイムの3分01秒0は、芝3000mの世界レコードタイム。まさに「早くて速い勝利」であった。

【了】

(文●中西友馬)

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