~あのミルコ・ヒコーキ くもり空わって~ミルコ・デムーロ飛行機ポーズ(4)快進撃の序章…フェブラリーで披露した「ゴールドフライト」
1999年に短期免許で初来日して以来、日本競馬で通算1300勝以上を挙げ、現在はJRA所属のジョッキーとして活躍するミルコ・デムーロ騎手。彼を語るうえで外せないのが「飛行機ポーズ」だ。
これは、大きなレースを制したときにたびたび披露される決めポーズで、その名の通り両手を広げ、飛行機のような姿勢を取る。
このポーズの元ネタは、イタリアを中心に活躍した元プロサッカー選手で、2025年現在はトルコ代表監督を務めるヴィンチェンツォ・モンテッラが、ゴール後に見せるパフォーマンスである。
モンテッラのファンだったデムーロ騎手は、偶然新幹線で本人に遭遇し、「大ファンです! ガッツポーズも大好きです!」と声をかけた。その際、「大きいレースで勝ったら、ぜひやってください」と言われ、約束を交わしたという。それ以来、このポーズはデムーロ騎手を象徴するパフォーマンスとなった。
今夏はアメリカへフライトし、奮闘を続けるデムーロ騎手。そこで今回は、彼が劇的勝利を飾り、飛行機ポーズを披露したレースを5つピックアップして紹介する。今回は4つ目のレース。
④2017年フェブラリーS(ゴールドドリーム)
2015年にJRA所属となったデムーロ騎手は、短期免許で来日していた頃以上の結果を残した。移籍初年度の騎手リーディングは3位、翌年も4位と安定して上位に入り、初年度にはいきなり日本ダービーを制する快挙。
たびたび飛行機になる彼自身が、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった。そんな彼のもとに巡ってきた有力馬の一頭が、ゴールドドリームだった。
デビューから3連勝でヒヤシンスステークスを勝ち、夏にはユニコーンステークスも勝利したゴールドドリーム。将来を見据え、古馬初対決となった武蔵野ステークスでデムーロ騎手と初コンビを組んだ。
だが、そこから2戦は出負けを連発。チャンピオンズカップではスタートからの巻き返しに脚を使わされた感もあり、2番人気に支持されながら12着に敗れていた。
そしてこのフェブラリーステークスも、絶好のスタートとはいえない発馬。だが、デムーロ騎手は前2走のレースから無理に巻き返さず、中団からレースを進めることを選択した。
これが600m通過34.0秒という、同レースの過去10年では最も速い通過タイムで進んだペースにビタリとハマった。道中存分に脚を溜めたゴールドドリームは、直線で外に持ち出されると手応え抜群に坂を駆け上がる。
抜け出してからはまさに横綱相撲で、追い込んできたベストウォーリアに並ばせることなく押し切り勝ち。念願のG1初制覇を成し遂げた。
ゴール後、デムーロ騎手はほんの一瞬手綱を離し、JRA所属となってからは初の飛行機ポーズを見せてくれた。彼はこれがJRA移籍後9回目のG1勝利となり、フェブラリーステークスは前年のモーニンに続く連覇を達成した。
2年連続で年度最初のG1を1着で飾り、最高のスタートダッシュを決めたデムーロ騎手は、この年キャリア最多の年間G1・6勝を記録し、騎手リーディングも戸崎騎手と並んで全国2位タイという素晴らしい成績を残す。
そんな年の最初に彼が見せてくれたこのポージングは「ゴールドフライト」と呼びたい。
【了】
(文●小早川涼風)
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