「軽ハンデ下克上!」斤量50キロ以下…空飛ぶ馬の痛快フィニッシュ(5)完全にレースを支配した3年目の女性騎手
「夏競馬は荒れる」というのは競馬界の格言の一つ。暑さに弱いサラブレッドにとって調整が難しい時期でもあり、人気馬が熱中症で惨敗なんていうこともよく聞くようになった。そこで今回は軽ハンデを生かして下克上を遂げた5頭を独断と偏見で選出した。条件は、2000年以降のハンデ重賞を50キロ以下の斤量で制した馬だ。今回は5頭目。
⑤アリスヴェリテ×永島まなみ(2024年マーメイドS)
~ハナ争いを制して勝負あり~
今村聖奈騎手の1年先輩、永島まなみ騎手は1年目の2022年こそ7勝に終わったが、2年目に21勝、3年目には50勝と右肩上がりの成長を見せていた。そんな3年目の2024年マーメイドSで大きなチャンスを手にする。
4歳春に2勝クラスを勝ち上がったばかりのアリスヴェリテは、主戦の柴田裕一郎が骨折休養中。50キロで騎乗できる永島騎手に白羽の矢が立った。まだ格下の身だったアリスヴェリテだが、2歳秋にはアルテミスSでリバティアイランドとも差のない競馬をしていた。特に逃げたときは4戦2勝、2着1回、3着1回と安定感は抜群。ハナを切ることを見込んだファンは、アリスヴェリテを4番人気(単勝オッズ9.1倍)に支持した。
「軽ハンデを生かして、この馬らしいレースができれば」とイメージを膨らませていた永島騎手。7枠13番から絶好のスタートを切ると、1枠1番からダッシュを利かせたベリーヴィーナスとのハナ争いを制した。先頭に立ったアリスヴェリテは、後続を離しながらの大逃げ。前半3ハロンを34秒8で通過したが、これはレース史上2番目に速いラップだった。例年の阪神から京都に場所を移していたことを踏まえても“暴走”と呼べる逃げに見えた。
しかし、50キロの斤量がアリスヴェリテのスタミナ温存に大きく寄与する。4コーナー手前で7~8馬身の差をつけ、後続の手綱が激しく動く中、永島騎手はほぼ持ったまま。直線を向いて、永島騎手がようやくゴーサインを送ると、最後まで後続に影を踏まさず、そのままゴール板を通過した。
「勝った人馬をほめるしかありません」これは2着に追い込んだエーデルブルーメに騎乗していた川田将雅騎手の敗戦の弁。まさに最初から最後までレースを支配したのは永島騎手だった。
【了】
(文●中川大河)
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