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「えっ、ほぼドラマじゃん…」天皇賞・春がGⅠ初制覇の馬(5)ショッキングな電撃引退…劇的勝利後の悲劇

text by 中西友馬

京都競馬場・芝3200mという、特殊ともいえる条件で行われる天皇賞(春)。この舞台では、各馬の適性を見極めることが容易ではなく、過去には大波乱となることが幾度もあった。そこで今回は、天皇賞(春)がG1初制覇であった馬たちの中から、5頭をピックアップ。悲願のG1初制覇となったレースを、プレイバックしていく。5頭目は、2018年の天皇賞(春)。

2018年天皇賞(春)を制した時のレインボーライン
2018年天皇賞(春)を制した時のレインボーライン

⑤2018年(勝ち馬レインボーライン)

 マイネルキッツの勝利から9年が経った、2018年の天皇賞(春)。この年の1番人気(単勝オッズ3.0倍)は、前年のジャパンCで宿敵キタサンブラックを破って悲願のG1初制覇を果たしたシュヴァルグラン。その時にコンビを組んでいたボウマン騎手との再タッグで、G1・2勝目を狙っていた。

 続く2番人気(単勝オッズ6.0倍)は、レインボーライン。これまでG1には9度挑戦して、菊花賞の2着が最高着順。ただ、前哨戦の阪神大賞典を快勝して、改めて長距離適性の高さを見せつけていた。

 そして3番人気(単勝オッズ6.6倍)は、ガンコ。こちらは元々ダートを主戦場にしていた馬であったが、久々の芝となった江坂特別を快勝。そこからトントン拍子に出世を果たし、前走の日経賞で重賞初制覇を飾っていた。

 この3頭を含め、この年も単勝10倍以下が5頭という混戦模様で発走を迎えた。

 上位人気3頭の位置取りは、ガンコが好位につけ、その直後にシュヴァルグランが追走した。レインボーラインは中団の後ろあたりを進んだ。前は、大逃げを打っていたヤマカツライデンのリードが3角手前からなくなっていき、4角手前でガンコとシュヴァルグランが並ぶように先頭へと変わる。レインボーラインは中団馬群の中で、4角を回って最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、ガンコを競り落としてシュヴァルグランが先頭へ。追いかける馬たちも同じような脚いろとなって押し切り濃厚かと思われたところに、内から馬体を併せてきたのがレインボーライン。岩田康誠騎手のアクションに応えて馬群を縫って伸び、シュヴァルグランの内からグイッと前に出たところがゴール。クビ差の2着にシュヴァルグランが入り、半馬身差の3着はクリンチャーとなった。

 勝ったレインボーラインであったが、入線後すぐに鞍上の岩田康誠騎手は下馬し、ハ行と診断された。その後、精密検査を行なったところ、右前繋部浅屈腱不全断裂の診断が下され、現役引退を余儀なくされた。

 10度目の挑戦で悲願のG1初制覇を飾り、これからといった矢先であったため、ショッキングな電撃引退であった。

【了】

(文●中西友馬

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