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“道営の星”や後のGⅠ馬を多数輩出する名物TRから勝ち馬5頭をピックアップ【セントライト記念 5選】

text by 中西友馬

1947年に創設されたセントライト記念は、日本初の3冠馬の名を冠す重賞だ。1995年から菊花賞トライアルとなり、舞台は東京から中山へ移った。距離も変更を重ね、1980年から中山芝2200mに定着している。76年の歴史から、5つの名勝負を選りすぐりを紹介する。

Balance of Game
第56回セントライト記念(新潟開催)のバランスオブゲーム

①2002年(勝ち馬バランスオブゲーム)

 最初に取り上げるのは、2002年に行われたセントライト記念。ちなみにこの年は、東京競馬場の改修工事による影響で開催日程が変わり、本来中山で行われるセントライト記念は新潟競馬場での開催となった。

 そしてこの年の牡馬クラシックは、1冠目の皐月賞から大波乱の幕開け。芝のレースでは4戦4勝と無敗のタニノギムレットが人気を集めたが、後方からの競馬で脚を余して3着止まり。そんな中、完璧な立ち回りで抜け出したのは15番人気のノーリーズン。まだ3連単のない時代であったが、単勝115.9倍、馬連530倍超という大荒れとなった。

 続くダービーでは、皐月賞とNHKマイルCで不完全燃焼だったタニノギムレットが鬱憤を晴らすような快勝。世代の頂点へと立ったが、秋シーズンを前に屈腱炎を発症し、電撃引退。混沌とした中で、秋シーズンを迎えたのであった。

 そんなセントライト記念の1番人気は、怪我により春のクラシックには出走できなかったアドマイヤマックス。ラジオたんぱ杯2歳S以来、約9ヶ月ぶりの実戦であった。

2番人気はバランスオブゲーム。こちらは、皐月賞8着、ダービー7着という戦績。春2冠の上位馬不在のここでは、人気を集めるのも納得であった。

 続く3番人気は、2歳時に朝日杯FS2着の実績があるヤマノブリザード。皐月賞10着、ダービー9着からの巻き返しを図っていた。この3頭までが単勝10倍を切る人気に推され、発走を迎えた。

 レースは、積極的に逃げたい馬がおらず、大外枠からジワっとハネダレンジャーがハナを切る。同じく外枠のマイネルアムンゼンが2番手となり、その直後にバランスオブゲームがつける。アドマイヤマックスも好位から進め、ヤマノブリザードは最後方で脚をためる展開となった。前半1000mの通過は61秒1と緩めの流れで進み、馬群は縦長にならず比較的一団。そのまま4角を回り、最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、残り300mあたりで2番手からマイネルアムンゼンが抜け出すも、その外へと切り替えたバランスオブゲームが襲いかかる。直後にいたアドマイヤマックスは、外から後続にかぶされて少し追い出しが遅れる。残り100mあたりで粘るマイネルアムンゼンを交わし、バランスオブゲームが先頭へと立つ。馬群を切り抜けてアドマイヤマックスが追ってくるが、2番手に浮上するのが精一杯。最後は1馬身半の差をつけて、バランスオブゲームが勝利した。アドマイヤマックスから半馬身遅れた3着にはマイネルアムンゼンが粘り込み、大外から上がり最速の脚で追い上げたヤマノブリザードは、4着までとなった。

 勝ったバランスオブゲームは、続く菊花賞ではヒシミラクルの5着。その後もG1ではあと一歩のレースが続いたが、セントライト記念を含めてG2では6勝をマーク。これはJRA記録であり、「G2の鬼」などと称された。 

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