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13番人気の伏兵アグネスデジタル、ハットトリックのGⅠ初制覇など【マイルCS 名勝負5選②】

text by 中西友馬

1984年に新設され、秋のマイル王決定戦として定着したマイルチャンピオンシップスプリンターズSから臨む馬もいれば、中距離戦の天皇賞(秋)から転戦する馬もおり、非常に興味深い一戦となっている。11月に京都芝1600mで開催されることは創設当初から変わらないが、2020〜2022年の3年間に関しては、京都競馬場の改修工事のため、阪神芝1600mを舞台に行われた。そんなマイルチャンピオンシップの歴史の中から、後半は2000年以降に行われた5つのレースをピックアップして紹介する。

Agnes Digital
第17回マイルCSを制したときのアグネスデジタル

⑥2000年(勝ち馬アグネスデジタル)

 タイキシャトルの連覇達成から2年が経った、2000年のマイルチャンピオンシップ。この年は確たる主役が不在で、人気も非常に割れていた。

 その中で単勝1番人気に推されたのが、4歳(現3歳)馬のダイタクリーヴァ。デビューから5戦4勝、1番人気で挑んだ皐月賞ではエアシャカールの2着。続く2番人気のダービーではアグネスフライトの12着に大敗し、秋は良績のあるマイル路線へと路線変更。古馬と初対戦となった富士Sで3着となり、マイルチャンピオンシップへと出走していた。

 そんなダイタクリーヴァにアクシデントが襲う。レース当日の9Rで落馬した主戦の高橋亮騎手が負傷し、突然の乗り替わりとなることが発表されたのである。その乗り替わった騎手は、たまたまメインレースに乗り馬がおらず、ダイタクリーヴァのデビュー戦で手綱を執っていた、当時まだ笠松所属の安藤勝己騎手であった。

 G1を勝ったことのないデビュー5年目の高橋亮騎手から、JRA所属でないながらも前年中央競馬で55勝を挙げた笠松のトップジョッキーへの乗り替わりということで、乗り替わり発表からダイタクリーヴァは一気に売れた。結果的にダイタクリーヴァは単勝4.8倍の1番人気に推され、発走を迎えた。

 レースは、最内枠を利してヤマカツスズランがハナを切る。ダイワカーリアンが2番手につけ、ダイタクリーヴァは中団後方寄りのインコースから進めていた。早めに隊列が固まったこともあり、流れはほぼ平均ペース。道中では大きな動きもないまま4角を回り、最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、ダイワカーリアンを振り切ったかに見えたヤマカツスズランだったが、その2頭の間から伸びてきたダイタクヤマトが先頭へと立つ。それに襲いかかったのが、馬群をさばいて伸びてきた同じダイタク冠のダイタクリーヴァ。

 残り100mでダイタクリーヴァが抜け出したところに、大外から鋭く伸びてきたのが後方待機のアグネスデジタル。ゴール前できっちり差し切って、勝利を挙げた。

 半馬身差の2着がダイタクリーヴァとなり、3着には内を立ち回って追い込んだメイショウオウドウが入った。流れ自体はハイペースではなかったが、結果的に後方待機の3頭での決着となった。

 勝ったアグネスデジタルは、ダイタクリーヴァと同じ4歳(現3歳)世代。この時点でダートの重賞を3勝するなど、主にダートを主戦場として戦ってきており、このメンバーに入ると芝での実績は乏しかった。そのため13番人気という伏兵扱いであったが、鮮やかな追い込みで勝利をつかんだ。

 アグネスデジタルはその後、芝・ダート問わずマイル〜中距離で勝利を重ね、現役引退までに獲得したG1タイトルは6つ。まさに最強のオールラウンダーとして活躍した。

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