⑤2020年(勝ち馬クリンチャー)
テイエムジンソクの勝利から3年が経った、2020年。京都競馬場の改修工事により、みやこステークスは史上初めて阪神競馬場で行われることとなる。そしてこの年の主役は、芝でも重賞勝利の経験があるクリンチャーであった。
クリンチャーは、デビューから18戦続けて芝のレースに出走。3歳時にはOPのすみれSを勝利し、クラシックも皆勤。3冠最終戦となる菊花賞では、10番人気ながら2着に食い込む活躍を見せた。古馬との初対戦となった京都記念で重賞初制覇を果たし、天皇賞(春)でも3着。その年の秋には凱旋門賞にも挑戦した。
しかしそのフランス遠征以後は、馬券圏内はおろか掲示板に載ることもできず、6歳シーズンからはダートに矛先を向けることとなる。ダートでもなかなか勝ち切れないレースが続いたが、久々の連対を果たすなど安定した成績を残し、みやこステークスへ出走することとなる。
クリンチャーは川田騎手との初コンビ。人気はかなり割れていたが、単勝3.4倍の1番人気に支持されて、発走を迎えた。
レースは、ベストタッチダウンがハナを切り、クリンチャーは好位の外めを追走。前半1000mの通過は60秒5で通過。10頭立てという少頭数にしてはしっかり流れて、比較的縦長な馬群となった。レースが動いたのは4角手前。逃げるベストタッチダウンが早めに後退し、2番手からエアアルマスが先頭へと立つ。その外にクリンチャーがぴったりつけ、4角を回って最後の直線へと向かう。
直線に入ると、エアアルマスとクリンチャーが並んでの追い比べ。残り300m辺りでねじ伏せるように前に出たクリンチャーが、ジリジリと後続との差を広げにかかる。
交わされたエアアルマスは苦しくなり、代わってヒストリーメイカーが2番手に上がるも、前を行くクリンチャーとの差は詰まらない。最後は3馬身の差をつけてクリンチャーが勝利。ヒストリーメイカーから4馬身離れた3着には、後方から追い上げたエイコーンが入った。
勝ったクリンチャーは、京都記念以来2年9ヶ月ぶりとなる勝利で、芝・ダート両重賞制覇を達成。その後も交流重賞を3勝し、7歳時の東京大賞典では、4連覇を達成したオメガパフュームに食い下がる2着。G1制覇にあと一歩のところまで迫る活躍を見せた。
このように、まだレースの歴史自体は浅いながらも、トランセンドやエスポワールシチーなど、ダート界の歴史に名を残す馬たちも勝利している。
JCダートからチャンピオンズCに改称された2014年以降、このレースをステップにチャンピオンズCを勝利した馬こそ出ていないが、本番でも善戦している馬は多数いる。注目のステップレースから目が離せない。
(文●中西友馬)