⑤2020年(勝ち馬メイケイエール)
実績とは関係なく、ファンからの人気が高い馬というものは存在する。そんなアイドルホースの代表的な馬の1頭が、2020年の勝ち馬メイケイエールである。
メイケイエールは、小倉の新馬戦を5馬身差で圧勝すると、続く小倉2歳Sも勝利。2戦2勝でファンタジーステークスに駒を進める。単勝オッズは、2.5倍の1番人気に支持されていた。
続く単勝4.0倍の2番人気は、同じくファンからの人気が高いヨカヨカ。九州産馬にも関わらず、一般馬相手にデビューから連勝。続くひまわり賞では、2歳牝馬ながら57キロを背負って勝利。同世代の九州産馬の頂点に輝いていた。
レースは、内枠を利してフリードがハナを切り、ヨカヨカは好位の後ろあたりの位置どり。メイケイエールは、スタート直後こそ中団の後ろにつけていたが、向正面でかかり気味にヨカヨカを交わして好位まで浮上していく。そのまま4角を回り、最後の直線へと向かう。
前は逃げるフリードにサルビアとラヴケリーが並びかけ、3頭による争い。メイケイエールがその外から差を詰め、さらにその直後からヨカヨカも追い込んでくる。残り250m辺りで前の争いからラヴケリーが抜け出すも、その外からメイケイエールが交わして先頭に立つ。後続が内外から迫ってきたが、そのまま押し切って勝利。
勝ち時計の1分20秒1は、2歳日本レコードであった。2着には最後方から追い込んだオパールムーンが入り、早め先頭のラヴケリーが3着に粘り込んだ。
勝ったメイケイエールはその後、G1タイトルにこそ届かなかったが、6つの重賞タイトルを獲得する活躍を見せた。ファンタジーステークスでも見せたように、気性面の課題があって大敗することもあったが、勝つときは本当に強い勝ち方を見せる馬であった。
そんな気分屋な性格に加え、整った容姿がファンの心をつかみ、写真集まで発売される人気っぷり。2022年に行われたアイドルホースオーディションでは、圧倒的な票を集めて1位に選ばれた。ちなみに、4位にはヨカヨカが選ばれ、ともにアイドルホースぬいぐるみが発売された。
ここで取り上げた5頭はもちろん、それ以外にも活躍馬を多数輩出しているファンタジーステークス。阪神JFはもちろん、翌年の牝馬クラシック戦線や短距離・マイル路線で活躍する馬を探しながら、レースを見ていきたい。
(文●中西友馬)