⑩2022年(勝ち馬イクイノックス)
3歳馬のエフフォーリアが、3世代対決を制した翌年の2022年。
2年連続で3歳馬の勝利となったこの年の天皇賞(秋)は、後に世界一にまで上り詰めたイクイノックスのG1初制覇の舞台であった。
イクイノックスは、この時点でまだキャリア4戦。2戦2勝で迎えた春のクラシック2戦は、ともに大外枠に泣いて2着に敗れていた。秋は3歳馬同士の菊花賞ではなく、古馬相手の天皇賞(秋)への出走を表明した。
もうすでに、春のクラシックで活躍した馬が天皇賞(秋)に向かうこと自体は珍しくなかったが、春のクラシック同様にトライアルを使わずに直行であったため、優勝すれば史上最少となる、キャリア5戦目での天皇賞(秋)出走となった。
イクイノックスは単勝2.6倍の1番人気。前年のダービー馬シャフリヤールや、札幌記念を勝利しているジャックドールなどの4歳勢が続く人気に推され、皐月賞馬ジオグリフや、ダービー1番人気のダノンベルーガなど、ほかの3歳勢も上位人気を固めていた。
レースは、内枠を利してパンサラッサがハナを切るかと思われたが、その外からノースブリッジが並びかける。しかしそれを突っ張るようにして逃げたパンサラッサは、後続をグングンと突き放して大逃げ態勢。
前半1000mの通過は57秒4というハイラップを刻み、2番手以降を15馬身ほど離していた。イクイノックスは中団後方寄りで脚をためていたが、パンサラッサとは20馬身ほどの差のまま4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線に入っても、パンサラッサは独走状態。追いかける好位勢は思うように差を詰められず、残り200mを切って2番手に上がったイクイノックスが、ジリジリと差を詰めてくる。最後まで必死に粘り込みを図ったパンサラッサだったが、それをゴール前できっちりと交わしたイクイノックスが勝利。1馬身差の2着にパンサラッサが入り、直線内に進路を見つけて伸びたダノンベルーガがクビ差の3着となった。
勝ったイクイノックスは、キャリア5戦目での天皇賞(秋)制覇を達成。さらに、この天皇賞(秋)から翌年の現役引退まで、G1だけを走って無傷の6連勝。世界ランキング1位となったまま、現役を引退した。
肉を切らせて骨を断つパンサラッサの大逃げと、それをきっちり捕えるイクイノックスの豪脚。まさに、競馬の魅力が詰まったようなレースであった。
このように、天皇賞(秋)には名勝負やドラマが数多く存在し、必ずしもそれはハッピーエンドばかりではない。
ここで紹介し切れなかったレースの中にも、ジャスタウェイの覚醒や、キタサンブラックのインまくり、デムーロ騎手の下馬しての最敬礼など、後世に語り継がれるであろうレースがたくさんある。
今度はどんな新しいドラマが生まれるのか、毎年楽しみにしてレースを見ていきたい。