⑧2008年(勝ち馬ウオッカ)
ゴール前の激戦をヘヴンリーロマンスが制した天覧競馬から3年が経った2008年の天皇賞(秋)。この年のゴール前は、2005年以上の大激戦。その中心には、競馬史に残る大接戦を演じた2頭の牝馬がいた。
この年の天皇賞(秋)は、戦前から3強対決という見方が大多数。1番人気はウオッカ。牝馬64年ぶりとなるダービー馬で、この時点でそのダービーを含めてG1タイトルを3つ持っていた。特に東京コースを得意としており、東京での大崩れはなかった。
2番人気はそのウオッカの永遠のライバル、ダイワスカーレット。こちらはどんな舞台でも高い水準でのパフォーマンスを見せており、ここまで10戦7勝2着3回という、連対率100%を継続中であった。ウオッカとの対戦成績も3勝1敗と勝ち越しており、G1タイトルも同じく3つ持っていた。
そして3番人気は、同年のダービー馬ディープスカイ。初勝利まで6戦を要したが、毎日杯で重賞初制覇を果たしてからは4連勝。NHKマイルカップとの変則2冠を達成すると、秋は菊花賞ではなく、古馬相手の天皇賞(秋)へと照準を合わせてきていた。
この3頭が単勝5倍を切る人気に推されており、4番人気のドリームジャーニーは単勝14.6倍。完全に3強対決の様相を呈して、発走を迎えた。
レースは、ダイワスカーレットが好ダッシュからハナを切る。中団前めにディープスカイがつけ、そのすぐ外をウオッカが追走する形となる。前半1000mの通過は58秒7とやや速めの流れ。縦長の展開で4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線は横に広がっての争い。ダイワスカーレットが最内で粘り込みを図るが、離れた外からディープスカイとウオッカが併せ馬の形で伸びてくる。残り200mでは、並びかけてきた勢いから、外のディープスカイとウオッカによる争いに見えたが、そこからダイワスカーレットが驚異の粘りを見せての大激戦。
最後の最後で少し遅れをとった真ん中のディープスカイを挟んで、内と外の2頭はまったく並んだように見える体勢でゴールへと入線した。
その後、13分間にも及ぶ長い写真判定の末、ウオッカが勝利。たった2センチ差とも言われるハナ差の2着にダイワスカーレットが入り、そしてクビ差の3着がディープスカイ。さらに、そこからハナ差の4着だったカンパニーまでが同タイムという大接戦であった。当時のコースレコードとなる、1分57秒2で4頭が駆け抜けたこのレースは、これからも語り継がれていくに違いない名勝負となった。