⑦2005年(勝ち馬ヘヴンリーロマンス)
アグネスデジタルの勝利から4年が経った、2005年の天皇賞(秋)。この年の天皇賞(秋)は、まさに歴史に残るレースとなった。
天皇賞では史上初となる、天覧競馬で行われたのである。天皇賞に限らず、天覧競馬自体がなんと106年ぶり。そんな記念すべき天皇賞(秋)を制したのは、14番人気の伏兵ヘヴンリーロマンスと、松永幹夫騎手のコンビであった。
この年の注目は、なんと言ってもゼンノロブロイ。前年の2004年に、史上初となる秋古馬3冠を達成した。2005年に入っても、英国のインターナショナルSで死闘の末、エレクトロキューショニストの2着。世界の一流馬相手にも通用する力のあることを証明したゼンノロブロイの、凱旋レースが天皇賞(秋)であった。
単勝オッズは、ゼンノロブロイが2.2倍の1番人気。続く6.7倍の2番人気は、同年の宝塚記念で2着に入り、3着だったゼンノロブロイに先GI天皇賞(秋)【過去の結果 -1984年以降 】着したハーツクライ。その宝塚記念で4着だったリンカーンが7.2倍の3番人気で続き、その宝塚記念を勝利したスイープトウショウが9.0倍の4番人気であった。単勝10倍を切るのはこの4頭で、宝塚記念の1〜4着馬が上位人気を占めていた。
レースは、好ダッシュからタップダンスシチーがハナを切るかに思われたが、その外からストーミーカフェが出て、この馬がペースを作った。上位人気馬の中では、中団前めにつけたゼンノロブロイが一番前で、ハーツクライとスイープトウショウはそのやや後ろから。
リンカーンは後方集団で脚をためていた。前半1000mの通過は62秒4というスローペースで進み、瞬発力勝負の様相。そのまま4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線に入ってもストーミーカフェが逃げていたが、残り400mを切った辺りで、内から抜け出したのはダンスインザムード。それを目がけて、外からゼンノロブロイが馬群を割るように伸びてくる。
残り50mを切ってゼンノロブロイがダンスインザムードに並びかけたその刹那、2頭の間からヘヴンリーロマンスがグイッと伸びてゴール。3頭によるゴール前の争いはヘヴンリーロマンスが制し、アタマ差の2着にゼンノロブロイ、さらにクビ差でダンスインザムードが続いた。
勝ったヘヴンリーロマンスは、エアグルーヴ以来8年ぶりとなる、牝馬による天皇賞制覇を達成。単勝オッズは75.8倍の14番人気であった。前走でスーパーG2の札幌記念を勝利していたが、その札幌記念は例年と比べてメンバーレベルが高くなかったとされ、人気の盲点となっていた。
ウイニングランの後にはスタンド前に向かい、鞍上の松永幹夫騎手がヘルメットを脱いで、馬上から天皇皇后両陛下に最敬礼。今でも天覧競馬を象徴する名シーンとなっている。