⑦2006年(勝ち馬ソングオブウインド)
ザッツザプレンティの勝利から2年が経った2005年の菊花賞では、ディープインパクトと武豊騎手のコンビが、史上2頭目となる無敗の3冠制覇を達成。そしてその翌年となる2006年の菊花賞では、弟の武幸四郎騎手が大仕事をやってのけた。
この年の注目は、2年連続の3冠馬誕生なるか。その資格を有していたのは、春の2冠馬メイショウサムソン。単勝2.0倍の1番人気に支持されており、3冠達成への期待が高まっていた。
2番人気はそのメイショウサムソンの永遠のライバル、ドリームパスポート。なんとこの時点で6度も直接対決があり、その戦績は3勝3敗とまったくの五分。直前の神戸新聞杯でもメイショウサムソンを下しており、逆転も十分ある相手筆頭という世間の評価であった。
3番人気はアドマイヤメイン。ダービー2着馬で、そのダービーでは逃げ粘ってメイショウサムソンをクビ差まで追い詰めていた。ダービー4着馬の良血マルカシェンクが4番人気で続き、この上位4頭までが、単勝10倍を切るオッズで発走を迎えた。
レースは、大方の予想通りアドマイヤメインの逃げ。だったのだが、後続をグングンと突き放す大逃げとなる。1000m通過は58秒7とハイラップを刻んで20馬身ほどのリードを作る。
メイショウサムソンは2番手グループの一角から進め、ドリームパスポートもその直後、好位の後ろ辺りを追走。マルカシェンクは中団からの競馬となった。アドマイヤメインは、武豊騎手が巧みにペースを操って息を入れ、5馬身以上の差を保ったまま4角を回り、最後の直線へと向かう。
ラチ沿いを粘るアドマイヤメインに対し、メイショウサムソンが2番手に上がって懸命に差を詰めようとする。しかし残り200mでドリームパスポートがメイショウサムソンの外から交わし、アドマイヤメインを追う。
そんな人気3頭の争いを大外からまとめて差し切ったのが、伏兵ソングオブウインドであった。
残り50mでアドマイヤメインを交わしたドリームパスポートはクビ差及ばず、鞍上の横山典弘騎手は菊花賞4年連続の2着。大逃げで見せ場を作ったアドマイヤメインが3着となり、3冠達成を目指し、正攻法の競馬でアドマイヤメインを追ったメイショウサムソンは、4着に終わった。
重賞初勝利がG1制覇となったソングオブウインド。勝ちタイムは3分02秒7のコースレコードであった。武豊騎手がハイペースを作り出し、後方待機の武幸四郎騎手がまさに風のように差し切る。図らずも兄弟アシストの形が決まったレースであった。