セイウンスカイ ~黄金の“98世代”でクラシック2冠。菊花賞での走りは今も語り継がれる伝説~
セイウンスカイ(Seiun Sky)
1998年の菊花賞で、黄金の“98世代”で二冠を達成するセイウンスカイが見せた逃げ切り勝ちは、菊花賞の歴史を覆す一戦だった。横山典弘騎手の巧みなペース配分で3分3秒2のレコードタイムを叩き出し、39年ぶりに菊花賞での逃げ切り勝利を達成。この快挙により、98世代の名馬として歴史に刻まれたセイウンスカイは、今も語り継がれている。
プロフィール
性別 | 牡馬 | |
父 | シェリフズスター | |
母 | シスターミル | |
生年月日 | 1995年4月26日 | |
馬主 | 西山牧場(1998年まで西山正行) | |
調教師 | 保田一隆 | |
生産牧場 | 西山牧場 | |
通算成績 | 13戦7勝【7-1-1-4】 | |
獲得賞金 | 6億1028万円 | |
主な勝ち鞍 |
菊花賞(1998年) 皐月賞(1998年) |
|
受賞歴 | なし | |
産駒成績 (2024年1月1日現在) |
産駒デビュー年:2005年 | |
通算重賞勝利数:15勝 | ||
通算G1勝利数:0勝 | ||
代表産駒 | なし |
常識を覆した緩急自在なトリックスター
クラシック3冠最終戦である菊花賞。京都芝3000mという長距離の舞台で行われるこのレースは、当然のことながらスタミナを要求される。そのため各馬は、最後の直線までなるべくスタミナを温存させて迎えたいと考える。
そんな中、序盤からハイペースを刻んで3000mを逃げ切るという、菊花賞の鉄則からかけ離れた戦法で勝利を掴んだ馬がいた。それが、セイウンスカイである。
セイウンスカイは、4歳(現3歳)の1月にデビュー。6馬身差の圧勝で新馬勝ちを果たすと、続くジュニアCも5馬身差の圧勝。年明けデビューながら、一躍クラシックの有力候補に挙げられるようになる。続く弥生賞ではスペシャルウィークに敗れて2着となるも、皐月賞ではリベンジを果たして勝利。最初の1冠を手中に収めた。続くダービーでは、キングヘイローの作り出したハイペースに巻き込まれて4着と敗れるも、秋初戦は京都大賞典で初対戦の古馬勢を撃破して勝利。しかもメジロブライトやシルクジャスティス、ステイゴールドといった古馬一線級の馬たちを相手にしての勝利であった。
そして迎えた菊花賞。京都大賞典の内容からセイウンスカイの評価が上がっても良さそうなものだが、断然の1番人気はダービー馬スペシャルウィーク。セイウンスカイは離された2番人気であった。
もちろんダービー馬のスペシャルウィークが1番人気になること自体は不思議なことではないが、セイウンスカイがスペシャルウィークに勝てないとする理由のひとつに、セイウンスカイが逃げ馬であるということが挙げられていた。
同時の菊花賞には、「菊花賞は逃げたら勝てない」という定石があった。実際に菊花賞の逃げ切り勝ちは、1959年のハククラマ以来、長らく成し遂げられていなかった。そのことが、スペシャルウィークの断然人気に拍車をかけていた。
しかし結果は、スペシャルウィークに3馬身半の差をつけてセイウンスカイが快勝。その裏には、鞍上の横山典弘騎手による緩急自在なペースメイクがあった。
2ハロン目から11秒台のラップを刻んで前半1000mを59秒6のハイペースで通過。今度は一転して13秒台のラップを織り交ぜながら、中間の1000mを64秒3のペースに落として息を入れる。そして早めのスパートで再び11秒台のラップまでペースを上げ、最後の1000mを59秒3でまとめる。その結果、同時のレースレコードとなる3分03秒2で走破してみせた。
皐月賞からコンビを組む、横山典弘騎手の完璧なエスコートに応えたセイウンスカイは、これまでの定石を覆して39年ぶりとなる菊花賞の逃げ切り勝ちを成し遂げたのである。
ちなみにその後も、菊花賞の逃げ切り勝ちはなかなか現れなかったが、セイウンスカイの勝利から23年が経った2021年の菊花賞。タイトルホルダーがセイウンスカイ以来23年ぶりとなる、菊花賞の逃げ切り勝ちを達成した。そしてその背中には、横山典弘騎手の息子である、横山武史騎手の姿があった。
(文●中西友馬)