競馬の世界で最高峰に位置づけられる「G1」。そのタイトルは騎手であれば一度は夢見る頂だろう。だが、その壁は高い。そもそも騎乗機会が限られ、さらに勝つには、運も馬の力も、技術も、すべてが噛み合わなければならない。そこで今回はG1初勝利までに最も多く挑戦した騎手たちトップ10 をランキング形式で紹介していく。[4/10ページ]
※2026年10月7日時点で現役の騎手を対象とし、JRA平地GⅠで初勝利を挙げるまでの騎乗回数を集計。
第7位 吉田隼人
挑戦39回目・2015年有馬記念・ゴールドアクター

2006年の秋華賞でコイウタに騎乗したのが初のG1挑戦であった吉田隼人騎手。デビュー3年目であったこの年は60勝を挙げ、「頼れるアンちゃん」としての実績を順調に積み重ねていたといえる。
勢いそのままに翌2007年、天皇賞(秋)で7番人気のアグネスアークを2着に導き、2009年には菊花賞でこれまた7番人気のフォゲッタブルと2着に入線。
それ以外のG1でも二桁人気の馬で掲示板へ突っ込んでくることもよくあり、常に大舞台で存在感を発揮していたジョッキーであった。
しかし、2009年の菊花賞でフォゲッタブルを2着に導いて以降、GⅠでは17戦連続で馬券圏外。約5年間にわたり、大舞台での好走から遠ざかっていた。
そんな折、2014年8月の札幌で隼人騎手はゴールドアクターと出会う。彼の手綱で条件戦を2連勝し、菊花賞では3着に好走。
翌2015年もコンビの快進撃は続く。夏の条件戦から3連勝を飾り、11月のアルゼンチン共和国杯では重賞初制覇。その勢いのまま、年末の大一番である有馬記念へと駒を進めた。
しかし、有馬記念まで1カ月を切った11月29日、東京競馬場でアクシデントが発生。馬場入場時に他馬に蹴られた隼人騎手は、右膝蓋骨を亀裂骨折し、全治6週間と診断された。
それでも隼人騎手は諦めなかった。ゴールドアクターへの強い思いから、たとえ負けても責任は自分が負う、足が曲がらなくなっても構わないという覚悟で陣営に騎乗を直談判。こうして有馬記念での騎乗が実現した。
当日は本番直前のホープフルステークスにも騎乗し芝の感触を確かめた隼人騎手は、レースでは逃げると見られていたキタサンブラックを制するような構えで相棒の行き脚をつけていく。
そのまま3番手の好位に控えると、勝負所では捲ってきたゴールドシップに動じることなく、内でじっと脚を温存。最後の直線で進出すると、粘るキタサンブラックとマリアライトを捕らえ、外から迫ったサウンズオブアースの追撃をクビ差で振り切って優勝した。
ゴール後、吉田騎手は馬上で左手の人差し指を高く掲げ、喜びを爆発させた。
デビュー12年目にして、ついにつかんだGⅠタイトル。それは、自身を信じ、相棒との絆を貫いた末に手にした栄光だった。
全治6週間の骨折を乗り越え、年末の大舞台で頂点に立った吉田騎手。少し遅れて訪れた最高のクリスマスプレゼントは、騎手人生に忘れられない一日を刻んだ。


