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【騎手がGⅠ初勝利するまでの挑戦回数ランキング】涙の数だけ強くなれる!諦めなかった者が辿り着いた絶景

text by 小早川涼風

競馬の世界で最高峰に位置づけられる「G1」。そのタイトルは騎手であれば一度は夢見る頂だろう。だが、その壁は高い。そもそも騎乗機会が限られ、さらに勝つには、運も馬の力も、技術も、すべてが噛み合わなければならない。そこで今回はG1初勝利までに最も多く挑戦した騎手たちトップ10 をランキング形式で紹介していく。[1/10ページ]

第10位 菱田裕二

挑戦30回目・2024年天皇賞(春)・テーオーロイヤル

2024年天皇賞(春)を制した時のテーオーロイヤル
2024年天皇賞(春)を制した時のテーオーロイヤル

 2004年5月2日、京都競馬場で行われた天皇賞(春)を制したのはイングランディーレ。その鞍上を務めた横山典弘騎手は、後続馬群を翻弄する芸術的な逃げを見せ、2着のゼンノロブロイを7馬身離す勝ち方でファンの度肝を抜いた。

 このレースを観て騎手を志した少年が、当時中学1年生の菱田裕二騎手であった。4年後に競馬学校の門を叩き、2012年に晴れて騎手デビューを果たした。

 菱田裕二騎手は同期の中では1位タイの23勝を挙げ、翌年の春には重賞・G1への騎乗も果たす順風満帆な滑り出し。3年目の2014年にはキャリアハイの64勝も挙げ、JRA通算100勝に到達という、トントン拍子に出世街道を上って行ったように見える。

 しかし若手騎手にとって、本当の試練は減量特典が外れる5年目から訪れる。平場では斤量が武器となる減量騎手は重用されやすいが、5年目以降は先輩騎手と同条件で戦うことになるからだ。

 それでも菱田騎手は大きく後退することはなかった。毎年30勝前後の勝ち数は残し、デビュー7年目の2018年には重賞初制覇。G1の騎乗もコンスタントに行い、勝てなくともしっかりと研鑽を積んでいく。

 そして2024年の天皇賞(春)、菱田騎手は3歳時の未勝利戦からコンビを組み続けていたテーオーロイヤルでついにG1初制覇を飾る。

 そのレースで先手を取ったのは、菱田騎手が競馬に魅了されたきっかけとなった横山典弘騎手のマテンロウレオだった。

 その背中を見ながら冷静沈着に仕掛けどころを見定めた菱田騎手は、勝負所でじわじわと進出すると、直線に向いたところでマテンロウレオを捕らえ、後続との差をグングン広げて圧勝。30回目の挑戦が実った瞬間だった。

 レース後、菱田騎手は「20年前の自分に見ておいてくれという気持ちで追っていました」とコメント。夢の舞台で輝いた菱田騎手の姿はきっと、まだ見ぬ誰かの憧れになったはずだ。

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