④ママコチャ
ここまで取り上げた3頭は、いずれもシラユキヒメ一族の白毛が遺伝した馬たちである。一方で、白毛を受け継がなかった一族の仔も当然いる。その1頭が鹿毛のママコチャだ。
ママコチャの父はクロフネで、母はブチコ。G1・3勝を挙げたソダシの全妹にあたる。彼女が初勝利を挙げたのは2歳の10月末。ちょうど姉のソダシが秋華賞を敗れた翌週だった。
その後、春のクラシックには間に合わなかったものの、3歳夏の条件戦を3連勝してオープン入り。だが昇級後、ママコチャはマイル重賞を2戦して着外に敗れた。これをきっかけに、彼女は短距離路線にシフトする。
およそ1年ぶりとなった芝1400m戦の安土城ステークスで1着となると、続く北九州記念も2着とし、G1初挑戦となったスプリンターズステークスに3番人気の評価で臨んだ。
ゲートが開くと、ママコチャはダッシュ良く3番手から進めていく。逃げるジャスパークローネが刻んだ600mのタイムは33秒3とやや速めだったが、当時の中山は多少のハイペースは苦にならない先行有利の馬場。
ママコチャは勝負所で前を射程圏に入れ直線で抜け出すと、最後は内から猛追してきたマッドクールと併せ馬の様相に。だが、僅かにハナ差だけママコチャが残してG1初制覇した。一族ではソダシに続いて、2頭目のG1ホースとなった。
レースから4日後、姉のソダシが現役を引退した。「ちょうどいいタイミングでバトンを渡せる」という、金子オーナーの判断だった。
その期待に応えるかのように活躍を続けるママコチャは、6歳となった2025年の春、中山芝1200mのオーシャンステークスでコースレコードを樹立。まだまだ短距離路線のトップホースとして、我々を楽しませてくれそうだ。