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「2018年安田記念」連闘で制したモズアスコット
「2018年安田記念」連闘で制したモズアスコット

⑤モズアスコット

性別:牡馬
父:Frankel
母:India
生年月日:2014年3月31日
毛色:栗毛
調教師:矢作芳人(栗東)

 3歳の6月という遅い時期のデビューとなったモズアスコット。しかし7月に未勝利を脱出すると、一気に破竹の4連勝でOPクラスまで駆け上がった。重賞初挑戦の阪神Cこそ4着に終わったが、そこからは重賞で連続して2着。前年の春にはまだ初出走すらしていなかった馬が1年足らずでG2で好走するまでになったのだから、通常はここでひと息入れるだろう。

しかし、彼を管理する矢作芳人師には既にG1で好勝負できるプランが見えていた。安田記念への賞金加算を狙った安土城Sは2着に終わったが、師はここからモズアスコットを連闘させる。とはいえ、まだ重賞タイトルを獲得できていない馬が勝ち負けするのは厳しいだろうというファンは判断し、本番は9番人気にとどまった。

 だが、レースでは中団から鋭く脚を伸ばし、上り最速となる33.3秒の末脚を繰り出して優勝。グレード制導入以降3頭目となる、連闘でのG1勝利を飾った。

 モズアスコットはこの後、1年以上勝ち星を挙げられずに低迷する。そこで陣営は、同馬をダート戦に向かわせることを決定。母方にStorm Catなどの砂血統が入っていることも好材料と見られたか、ダート初戦となった根岸Sでは3番人気に推される。結果は見事に1着。続くフェブラリーSも中団から安田記念を彷彿とさせるような末脚で勝利し、JRAでは史上5頭目、アドマイヤドン以来実に14年ぶりとなる芝・ダート両方のG1タイトルを獲得した。

 ちなみに連闘で芝のG1を制覇した経験がありながら、ダートのG1を勝利した馬はもちろん同馬が史上初。今後なかなか達成されない記録のような気もするが、2024年に初年度産駒がデビューしたモズアスコットの仔は、両刀使いの馬も多い印象がある。もし彼の仔で、相当な素質馬が再び矢作師の下に入厩することがあれば…世界でも類を見ない、連闘でのG1制覇、もしくは芝・ダートのG1タイトル獲得を、親子で達成するという大記録が見られるかもしれない。

【了】

(文●小早川涼風

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