【“二刀流”ホース5選】芝でもダートでもかかってこい!競馬界のスーパーオールラウンダー
大谷翔平選手の活躍もあり、近年「二刀流」という言葉を耳にする機会が増えた。もとは剣術の用語だが、今では「かけもち」や「二足のわらじ」といった意味でも使われている。その二刀流は、競馬界にも存在する。芝とダート、両方で活躍した馬たちは、まさにその体現者だ。今回は、芝とダートのG1を制覇した名馬5頭を紹介する。
①アグネスデジタル
性別:牡馬
父:Crafty Prospector
母:Chancey Squaw
生年月日:1997年5月15日
毛色:栗毛
調教師:白井寿昭(栗東)
デビューしてからしばらくは芝とダートを交互に使われていたアグネスデジタルだが、3歳の暮れに全日本3歳優駿(当時はG2級)を制し、翌春の名古屋優駿(当時は中央交流レースでG3級)を勝利したことで一旦はダート路線に舵を切る。
ダートG1級競走は初となったジャパンダートダービー(現:ジャパンダートクラシック)こそ16頭立て14着と敗れたものの、秋にはユニコーンSを制覇しダートグレード3勝目を飾る。さらに古馬との初対決となった武蔵野Sも、古豪サンフォードシチーを相手に1馬身差の2着と善戦した。この結果から、次走は恐らくJCダート(現:チャンピオンズC)で、世界の強豪相手に挑むことになるだろうと、ほとんどのファンは思っていたに違いない。
ところが陣営が選んだのは、なんとその前週に行われる芝G1、マイルCSへの出走だった。この時点でアグネスデジタルは芝で未勝利。加えて、同じマイルG1のNHKマイルCでは中団から伸びきれずに勝ち馬からコンマ8秒離された7着に終わっていたことも手伝って、当日の人気は18頭立て13番人気と、大穴馬の一角に過ぎない評価だった。
しかし、レースは後方から進めたアグネスデジタルが前を行く15頭を上り最速で差し切って1着。翌年鞭を置くことになる鞍上の的場均騎手に現役最後のG1タイトルをプレゼントしたその勝利は、なんとレコードタイム。ファンの度肝を抜いて見せた。
翌年の秋、アグネスデジタルは再びダート路線に矛先を向け、マイルチャンピオンシップ南部杯を好位から押し切って勝利。芝でなかなか結果が出ない中、ダートグレードで復活を挙げたことにより、いよいよダート界の主役として歩み始める一歩を踏み出したかと思われた。だが、今度ここからは中1週で天皇賞・秋に参戦することを決定。当時の王者、テイエムオペラオーを下して1着に輝き、再びファンを驚嘆させた。
そしてここから、アグネスデジタルは香港C、フェブラリーSと連勝を決める。2025年7月現在、JRAで唯一の芝・ダートを挟んだG1級競走4連勝という記録を作り上げるほどの名馬となっていくのである。