デアリングタクト 〜まだ誰も成し遂げたことがなった無敗のヒロイン。古馬になってからは怪我に泣く〜
デアリングタクト(Daring Tact)
デビューから無傷のまま牝馬三冠を制覇し、史上初の無敗三冠牝馬となったデアリングタクト。怪我に苦しみながらも、復帰後は宝塚記念3着など一線級の活躍を続けた。短い全盛期に残した圧倒的な成績は、競馬ファンの記憶に深く刻まれている。
プロフィール
性別 | 牝馬 | |
父 | エピファネイア | |
母 | デアリングバード | |
生年月日 | 2017年4月15日 | |
馬主 | ノルマンディーサラブレッドレーシング | |
調教師 | 杉山晴紀 | |
生産牧場 | 長谷川牧場 | |
通算成績 | 13戦5勝【5-1-3-4】 | |
獲得賞金 | 6億1091万円 | |
主な勝ち鞍 | 牝馬3冠(2020年) | |
受賞歴 | 最優秀3歳牝馬(2020年) | |
産駒成績 | 産駒デビュー年:2027年(予定) | |
通算重賞勝利数:0勝 | ||
通算G1勝利数:0勝 | ||
代表産駒 | なし |
史上初となる無傷でのトリプルティアラ
デアリングタクトは、2019年11月に京都競馬場でデビューした。父はジャパンカップを制したエピファネイア、母のデアリングバードは1戦0勝であったが、母の母は重賞3勝のデアリングハートという血統であった。レースは、加速ラップを差し切ってデビュー勝ちを果たした。
2戦目は年が明けて3歳となったエルフィンS。またも加速ラップを後方からまとめて差し切り、さらに後続に4馬身差をつける圧勝であった。
3戦目は、トライアルを使わずに向かった牝馬3冠第1戦の桜花賞。デビューから2戦は抜群の切れ味を見せたデアリングタクトだが、この日は朝から雨。レースの上がりが38.1秒というかなり重い馬場を、中団からただ1頭別次元の脚で差し切っての勝利。自身G1初制覇を飾るとともに、父のエピファネイアにもG1初勝利をプレゼント。キャリア3戦目にして、最初の1冠を手に入れた。
続く優駿牝馬(オークス)も、中団からの競馬。直線ではなかなか進路がなかったが、残り300mでエンジンがかかると一気に加速して差し切り、2冠目もゲットした。
夏を経てパワーアップしたデアリングタクトは、牝馬3冠をかけて秋華賞に直行した。上位人気馬は軒並み春に倒した馬たちばかりで、単勝1.4倍の断然人気に推されていた。レースは後方寄りから進めると、京都の内回りコースを意識して早めに動き、4角では前を射程圏に入れる。直線では内外から後続馬が追いすがったが、それを振り切り勝利。史上初となる、無敗での牝馬3冠を達成した。
同世代の牝馬相手に敵なしとなったデアリングタクトは、ジャパンカップで古馬との初対決を迎える。一昨年の牝馬3冠馬アーモンドアイ、同世代で無敗の3冠馬となったコントレイルとの、3強対決に注目が集まっていた。レースは好位から抜け出したアーモンドアイが先輩の意地を見せて勝利。デアリングタクトは2着のコントレイルからクビ差遅れての3着となり、デビューからの連勝は5でストップした。
年が明けて4歳となったデアリングタクトは、金鯱賞から始動。単勝1.4倍の断然人気に推されたが、最低人気の伏兵ギベオンに逃げ切りを許しての2着。
その後、初の海外遠征となるクイーンエリザベス2世Cに出走するも、共に遠征したラヴズオンリーユーとグローリーヴェイズに敗れて3着となった。帰国後、靭帯炎を発症していたことが発覚し、長期休養を余儀なくされた。
復帰戦は、1年以上経って5歳となったヴィクトリアマイル。1年以上ぶりのレースに加えて+22キロでの出走となったが、6着に健闘。さらに続く宝塚記念では、コースレコードで完勝したタイトルホルダーを懸命に追っての3着。
夏を経て、秋初戦のオールカマーでは1番人気に推されるも、6着に敗れた。京都競馬場の改修によって阪神競馬場で行われたエリザベス女王杯でも1番人気に支持されたが、伸び切れずに6着。そして続くジャパンカップでは、デビューからずっと手綱を執ってきた松山弘平騎手に変わって、マーカンド騎手の騎乗で4着となった。
5歳シーズンを終えたデアリングタクトは、6歳シーズンも現役続行となった。しかし脚部不安で海外遠征を断念。さらに靭帯炎を再発したことにより、引退が発表された。
無敗の3冠馬となった後は、怪我もあって勝利を挙げることはできなかったが、牡馬の一線級とも互角の戦いを見せていたデアリングタクト。繁殖牝馬としても、どんな仔を輩出するのか楽しみに待たれる。
(文●中西友馬)