カルストンライトオ ~唯一無二の短距離王が成し遂げた偉業とは。ファンを魅了した驚異の“韋駄天”~
カルストンライトオ(Calstone Light O)
顔の大流星が特徴的な黒鹿毛馬は、類まれなスピードで短距離界を席巻した。アイビスサマーダッシュ2勝と日本レコード53.7秒、スプリンターズSの4馬身差圧勝など、驚異的な“記録”を残している。「韋駄天」の異名にふさわしい逃げ切りで、ファンを魅了した“短距離王”はアイビスSD&スプリンターズS同年制覇の唯一の馬として日本競馬史に名を刻んでいる。
プロフィール
性別 | 牡馬 | |
父 | ウォーニング | |
母 | オオシマルチア | |
生年月日 | 1998年5月3日 | |
馬主 | 清水貞光 | |
調教師 | 大根田裕之 | |
生産者 | 大島牧場 | |
通算成績 | 36戦9勝【9-4-7-16】 | |
獲得賞金 | 4億2204万4000円 | |
主な勝ち鞍 |
2002年 アイビスサマーダッシュ 2004年 アイビスサマーダッシュ 2004年 スプリンターズステークス |
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受賞歴 | なし |
圧倒的なスピードを数値で示した「韋駄天」
1998年に大島牧場で父ウォーニング、母オオシマルチアの間に生まれ、顔に特徴的な大流星が走る黒鹿毛の仔馬は、99年のセリ市に上場された。現調教師である清水久詞の父、貞光氏によって1800万円(税抜)で落札され、大根田裕之厩舎に所属することとなった。新潟名物「千直」重賞のアイビスサマーダッシュを2勝、そしてGⅠのスプリンターズSを圧倒的なスピード能力で制したカルストンライトオは「韋駄天」と呼ばれ、ファンに親しまれた。
カルストンライトオの類まれなスピード能力は2000年11月のデビュー戦、続く条件戦で早くも発揮される。ともに京都で行われた芝1200m戦でそれぞれ4馬身、6馬身差をつけての逃げ切り勝ちを収めた。しかし、次のマイルGⅠ朝日杯3歳ステークス(現・朝日杯フューチュリティS)、翌01年のダート1400mのバイオレットSは条件が合わず、ともに10着に大敗した。3歳時の春から初夏にかけては芝1200~1600mを使われ、オープンの葵Sを勝つなど、4戦すべてで掲示板を確保し、実力の片鱗を示した。
北九州短距離ステークスを勝利した後、臨んだ第1回アイビスサマーダッシュでは、53キロの軽斤量だったこともあり1番人気となった。内めの5番枠から馬場の真ん中をじわり先頭に立ってレースを進めたが、ゴール前で脚色が鈍り3着に敗れる。秋はセントウルSで3着に好走するも苦戦が続き、重賞タイトル獲得はお預けとなった。
翌02年は、休養を経て夏から始動した。復帰戦となったTUF杯では、初コンビの大西直宏騎手を背に快勝。その後は2戦を挟んで、昨年好走した第2回アイビスサマーダッシュを迎えた。13頭立ての12番枠からダッシュよく飛び出すと、外ラチ沿い一杯を通って一度も先頭を譲ることなくゴール板を走り抜けた。勝ちタイムの53.7秒は、20年以上経った現在も塗り替えられていない破格の日本レコードである。また道中3~4ハロン目に記録した“9.6”秒も日本史上最速ラップタイムともいわれており、この馬の持つスピードがどれほどだったかがうかがい知れる。
その後はオープンのアンドロメダSで優勝したカルストンライトオだったが、年末のCBC賞でも10着に敗れるなど全体的に成績が落ち込んだ。復帰戦となった翌年6月のバーデンバーデンカップで2着、函館スプリントSで3着に入り復調気配を漂わせた。再び軌道に乗ったカルストンライトオは、2年前に鮮やかな逃げ切りで重賞初制覇を飾った新潟名物の千直重賞で、完全復活をアピールする。
第4回アイビスサマーダッシュで、単勝1番人気の支持を集めて5番枠からスタートしたカルストンライトオは、再タッグとなった大西騎手に誘導され、外ラチ沿いギリギリのベストポジションを疾走。2年前を彷彿とさせる逃げで、中盤あたりから後続との差を徐々に広げ、2着に3馬身差をつけて逃げ切った。この着差は06年のサチノスイーティーと並びレース史上最大着差となっている。
勢いに乗ったカルストンライトオは、中山のG1スプリンターズSに挑戦した。単勝オッズ8.5倍の5番人気の評価だったが、不良馬場をものともしないスピードを見せつける。好ダッシュからおっつけながらハナに立つと、後続馬を引きつけながらの逃げを打った。「いつか失速する」と思われたカルストンライトオだったが、脚色は衰えるどころか勢いを増していくばかりとなった。1馬身ほどのリードで3コーナーに入ったが、最終コーナーを回り切って、直線残り300m地点ではその差はさらに広がり、あっという間に4~5馬身ほどのセーフティーリードに変わった。
持てるスピード能力を全開させたカルストンライトオは、GⅠに昇格してからのレース史上最大着差に並ぶ、4馬身もの差をつけてゴールを駆け抜けた。同時に、史上唯一となるアイビスサマーダッシュ&スプリンターズS同年制覇という偉業を成し遂げた。
カルストンライトオは、父のウォーニングが世界的にも衰退傾向にあったMan O’ War(マンノウォー)の直系であったことから、後継種牡馬の輩出を期待されたが、目立った産駒を出すことはできなかった。だが、短距離戦を類まれなスピード能力で魅了し、勝ち時計やラップタイムの数値でも示した「韋駄天」ぶりは、人々の脳裏から離れることは無いだろう。
(文●TOM)