⑤2022年(勝ち馬：タイトルホルダー)

　ここまで紹介した4頭は、ファン投票1位と1番人気に応えて勝利した馬たちを取り上げてきたが、ファン投票1位＝1番人気とは限らない。2022年の宝塚記念を制したタイトルホルダーは、ファン投票で堂々の1位に輝きながら、2番人気(単勝オッズ4.2倍)。直前の天皇賞(春)を7馬身差で圧勝しながら、中距離G1での実績がないことと、同型のパンサラッサの存在から、2番人気に甘んじていた。

　タイトルホルダーを抑えて1番人気(単勝3.3倍)に推されたのは、同じ4歳馬のエフフォーリア。対タイトルホルダーで考えると、前年の皐月賞、ダービー、有馬記念と3戦続けて先着。4歳初戦の大阪杯ではまさかの9着に敗れたが、前年の年度代表馬の復活に期待しての評価であった。

　レースは、好スタートを切ったタイトルホルダーがハナを取りきったように見えたが、行き脚のついた徹底先行型パンサラッサが押して先頭へ。タイトルホルダーは少し離れた2番手に控え、エフフォーリアは中団のインコースから進めていた。前半1000mの通過は57秒6というハイペースでパンサラッサが引っ張り、馬群は縦長。隊列に大きな動きはないが、タイトルホルダーがパンサラッサとの差を詰めて4角を回り、最後の直線へと向かう。

　直線に入ると、早々とパンサラッサを交わしたタイトルホルダーが堂々先頭。ハイペースを2番手追走から早めに抜け出したが、その後ろから追ってきた各馬も同じ脚いろ。最後まで2馬身の差をキープして押し切ってみせた。好位から伸びたヒシイグアスが2着となり、さらに2馬身差の3着に中団追走のデアリングタクトが入った。1番人気のエフフォーリアは中団からジリジリ伸びてくるも6着に敗れた。

　勝ったタイトルホルダーは、阪神開催で行われた菊花賞、天皇賞(春)に続いて、阪神でのG1・3勝目。京都競馬場の改修工事によって挑戦権を得ることができた、「阪神3冠」を達成した。さらに勝ち時計の2分09秒7は、コースレコードのオマケつき。スタミナだけでなく、非凡なスピードも持ち合わせていることを証明する勝利であった。

　このように、ファン投票1位に応えて宝塚記念を制した馬たちは、その時代を彩る名馬ぞろい。
　
　ちなみに今年のファン投票1位は、22万8950票を獲得したベラジオオペラ。現時点では宝塚記念への出走意思を表明しており、名馬たちと同じ足跡をたどることができるか、楽しみに見ていきたい。

【了】

（文●中西友馬）