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2012年天皇賞(春)ビートブラック(写真右)
2012年天皇賞(春)ビートブラック(写真右)

④2012年(勝ち馬ビートブラック)

 サクラローレルのG1初制覇から16年が経った、2012年の天皇賞(春)。この年の主役は、なんと言ってもオルフェーヴルであった。前年にクラシック3冠を達成し、続く有馬記念であっさりと古馬を撃破。まさに向かうところ敵なしといったところで、4歳初戦の阪神大賞典では、単勝1.1倍という断然人気に推されていた。

 しかし、前半1000m通過あたりから様子がおかしく、引っかかり気味に上がっていって前に並びかけると、2周目の向正面では先頭へと立って逃げる形になった。さらには3角手前で外ラチ沿いまで逃避して失速。後方まで下がり故障も疑われたが、そこから再び急加速する。大外をまくり気味に盛り返すと、直線では一旦先頭へと立つ。最後は、内でロスなく立ち回ったギュスターヴクライに半馬身及ばずの2着に敗れたが、単勝オッズ1.1倍の断然人気を裏切ったことよりも、気性面の課題と無尽蔵のスタミナを改めて知らしめる形となった。

 そんな前哨戦を経ての、天皇賞(春)。平地調教再審査を合格したオルフェーヴルは、無事に出走することができた。そして単勝オッズは1.3倍。やはり断然の1番人気に支持されて、発走を迎えた。

 レースは、最内枠からビートブラックがハナを主張するも、押して押してゴールデンハインドが先手を取る。ビートブラックは2番手となり、さらに続いたナムラクレセントとの3頭で、後続を引き離す展開となる。そんな縦長の馬群の中、注目のオルフェーヴルは後方3番手あたりから進めていた。前は2周目の向正面に入ったあたりで3頭からナムラクレセントが脱落し、ゴールデンハインドとビートブラックの2頭で引っ張る形となる。さらに3角ではビートブラックがゴールデンハインドに並びかけて先頭へと立つが、この時点でまだ後続各馬ははるか後方。オルフェーヴルは池添騎手のアクションが大きくなっているにも関わらず、上がっていく感じはなかった。そのまま前の2頭が後続を10馬身近く引き離して4角を回り、最後の直線へと向かう。

 直線に入っても、先頭のビートブラックはまだ大きなリードを保ったまま。ゴールデンハインドは苦しくなり、残り200mを切ってトーセンジョーダンが2番手へと浮上するも、オルフェーヴルは中団の大外でもがいていた。そのまま押し切ったビートブラックが快勝。4馬身差の2着にトーセンジョーダンが入り、さらに2馬身差の3着がウインバリアシオン。人気を集めたオルフェーヴルは伸びを欠き、11着同着に敗れた。

 勝ったビートブラックは、単勝オッズ159.6倍の14番人気。重賞初制覇がこのG1の大舞台であり、さらには、鞍上の石橋脩騎手にもG1初勝利をプレゼントした。ビートブラックはその後、屈腱炎を発症したことなどもあり、現役引退まで馬券圏内に入ることはなかった。相棒であるビートブラックのスタミナを信じた、石橋脩騎手の「攻める騎乗」が実を結んだ天皇賞(春)勝利であった。

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