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1996年天皇賞(春)サクラローレル
1996年天皇賞(春)サクラローレル

③1996年(勝ち馬サクラローレル)

 ライスシャワーが天皇賞(春)2勝目を飾った翌年となる、1996年の天皇賞(春)。この年は、1992年と同じく2強ムード。1番人気は、2年前にクラシック3冠を達成した、シャドーロールの怪物ナリタブライアン。しかし前年は、関節炎によって天皇賞(春)を回避。その後の秋3戦も精彩を欠いていたが、前哨戦の阪神大賞典でマヤノトップガンとの一騎打ちを制し、復活ののろしを上げていた。

 そして2番人気が、そのマヤノトップガン。前年のダービーの時期まではダートを走っていながら、そこから一気に頭角を現した。秋には菊花賞だけでなく、豪華メンバーの揃った有馬記念も勝利。一気に主役候補に上り詰めていた。前出の阪神大賞典では、ナリタブライアンと激しい叩き合いの末、アタマ差で敗れたが、後続は9馬身ちぎっており完全に2頭の世界となっていた。

 単勝オッズは、ナリタブライアンが1.7倍でマヤノトップガンが2.8倍。この2頭の馬連は2.0倍という断然の支持を受け、発走を迎えた。

 レースは、テイエムジャンボが押してハナを切ったかに思えたが、外枠からスギノブルボンも譲らない構え。この2頭が競り合う形で後続を引き離す展開となった。注目の2頭は、マヤノトップガンが好位につけ、ナリタブライアンはそれを見る形。阪神大賞典と同じくマヤノトップガンが前で、ナリタブライアンが後ろという並びとなった。レースが動いたのは、2周目の向正面。残り1000m手前で前を行っていた2頭のリードがみるみるなくなり、馬群は一団に。踏ん張っていた2頭であったが、その外からマヤノトップガンが上がっていき、4角手前で早くも先頭に立った。さらにはそれをマークするようにナリタブライアンも並びかけ、4角を回って最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、外からナリタブライアンが前に出ようとするが、内でマヤノトップガンも必死に抵抗する。阪神大賞典の再現かと思われたところに、後ろからヒタヒタと迫るサクラローレルの姿があった。マヤノトップガンを競り落とすために早めに踏んでいたナリタブライアンの脚いろが鈍った残り100m、一気に交わしたサクラローレルが2馬身半つき離して勝利。2着にナリタブライアンが入り、最後に力尽きたマヤノトップガンは5着となった。

 勝ったサクラローレルは、これがG1初挑戦にしてG1初制覇。現役続行も危ぶまれるほどの重度の骨折から復活を果たし、2強を撃破しての春の盾戴冠は、競馬ファンに感動を与えた。

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