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競馬に絶対はない…天皇賞(春)で起きた下剋上【単勝1倍台を打ち破った馬 5選】

text by 中西友馬

伝統のマラソンレース天皇賞(春)。長距離戦では出遅れや不利が結果に与える影響は比較的小さく、本当にスタミナがある馬が勝利する。しかし、3000m以上のレースは少なく、適性を見極めるのは容易ではない。そこで今回は、単勝1倍台の人気馬を退け、春の盾を獲得した馬に注目。 中でも印象的な5頭をピックアップし振り返っていく。

1992年天皇賞(春)メジロマックイーン(写真左)とトウカイテイオー(写真中央)
1992年天皇賞(春)メジロマックイーン(写真左)とトウカイテイオー(写真中央)

①1992年(勝ち馬メジロマックイーン)

 最初に取り上げるのは、1992年の天皇賞(春)。この年の1番人気は単勝オッズ1.5倍のトウカイテイオーであった。デビューから6戦6勝で無敗のダービー馬に輝いた馬である。骨折によって菊花賞は断念することとなり、無敗の3冠馬への道は断たれてしまったが、約10ヶ月ぶりの復帰戦となった産経大阪杯を快勝。デビューから無傷の7戦7勝で天皇賞(春)を迎えていた。

 しかし、この年の天皇賞(春)は、トウカイテイオー1強ではなかった。2番人気は前年覇者のメジロマックイーン。長距離戦に比類なき適性があり、菊花賞と天皇賞(春)を含んだ3000m超の重賞では、4戦4勝。菊花賞に出走できなかったトウカイテイオーは2400mまでの距離しか経験がなかったため、舞台適性の高さではメジロマックイーンに分があると見られていた。

 単勝オッズは、トウカイテイオー1.5倍に対してメジロマックイーン2.2倍。両馬の馬連オッズも1.5倍と、圧倒的な2強ムード。3番人気以下を大きく引き離す、まさに「世紀の対決」に注目が集まって、発走を迎えた。

 レースは、メジロパーマーがハナを切り、ボストンキコウシが2番手。メジロマックイーンは中団あたりに位置どり、それを見る形でトウカイテイオーが追走していた。馬群はかなり縦長の隊列となる中、メジロマックイーンは2周目に入ったあたりからスルスルと上がっていき、好位に取りつく。そのときトウカイテイオーは、グッと我慢して中団のまま。勝負どころを前に、動いたのはメジロマックイーン。3角手前では先頭のメジロパーマーに並びかける。しかしそれと同時にトウカイテイオーも中団からポジションを上げ、3番手まで浮上。さらにその外からカミノクレッセも連れるように上がってきて、4頭一団のまま4角を回り、最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、メジロパーマーを競り落としてメジロマックイーンが先頭。その外からトウカイテイオーが追いかけるが、これまでのような伸びはなく、むしろその外のカミノクレッセのほうが脚いろで上回る。カミノクレッセがトウカイテイオーを交わして2番手へと上がり、メジロマックイーンとの差を詰めにかかるが、直線半ばからは同じ脚いろ。トウカイテイオーは完全に脚が止まり、前の2頭からどんどん離されていく。最後までリードをキープしたメジロマックイーンが勝利。2馬身半差の2着がカミノクレッセとなり、そこから5馬身離れた3着がイブキマイカグラ。トウカイテイオーは、メジロマックイーンから1秒7離された5着に敗れた。

 勝ったメジロマックイーンは、史上初となる天皇賞(春)連覇の快挙を達成。鞍上の武豊騎手は、こちらも史上初となる、同一G1・4連覇を達成した。単勝1.5倍のトウカイテイオーを破って、春の盾を獲得したメジロマックイーン。長距離適性の高さで圧倒した、鮮やかな勝利であった。

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