アパパネ 〜早熟の才能で牝馬三冠を制した“大王の娘”。真っ赤な翼は子孫へと受け継がれる〜
アパパネ(Apapane)
アパパネは2009年にデビューし、桜花賞、優駿牝馬、秋華賞で牝馬三冠を達成。さらにヴィクトリアマイルでもG1タイトルを獲得し、計5つのG1勝利を収めた。引退後は繁殖牝馬となり、産駒アカイトリノムスメが秋華賞を制覇するなど、母仔制覇を達成。2023年末時点で産駒6頭全てが勝ち上がるなど、繁殖馬としても成功している。
プロフィール
性別 | 牝馬 | |
父 | キングカメハメハ | |
母 | ソルティビッド | |
生年月日 | 2007年4月20日 | |
馬主 | 金子真人ホールディングス | |
調教師 | 国枝栄 | |
生産牧場 | ノーザンファーム | |
通算成績 | 19戦7勝【7-1-3-8】 | |
獲得賞金 | 5億5859万円 | |
主な勝ち鞍 |
牝馬3冠(2010年) ヴィクトリアマイル(2011年) 阪神JF(2009年) |
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受賞歴 |
最優秀2歳牝馬(2009年) 最優秀3歳牝馬(2010年) |
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産駒成績 | 産駒デビュー年:2014年 | |
通算重賞勝利数:2勝 | ||
通算G1勝利数:1勝 | ||
代表産駒 | アカイトリノムスメ(2021年秋華賞) |
日々成長を続けた真っ赤な翼
アパパネは2009年7月に福島競馬場でデビューした。父はダービー馬キングカメハメハ、母は1200m以下の短距離で3勝を挙げたソルティビッドという、金子オーナー所有馬同士の配合であった。レースは好位追走から早めに進出して、4角先頭の強気な競馬。しかし最後は脚が上がってしまい、3着に敗れた。
約4ヶ月の休養を経ての2戦目は、+24キロとなる476キロでの出走。好位から抜け出して初勝利を飾った。さらに中1週で挑んだ3戦目の赤松賞では、中団から鋭く伸びて2馬身半差の快勝。2歳コースレコードを更新しての勝利であった。続く阪神JFでも中団からの差し切りを決めて、G1初制覇を飾った。
年が明けて3歳となったアパパネは、桜花賞トライアルのチューリップ賞から始動した。3戦連続の大外枠となったレースは、重い馬場に切れ味を削がれて伸び切れず2着に敗れた。そして迎えた牝馬3冠第1戦の桜花賞。好位からレースを進めると、逃げ粘るオウケンサクラを半馬身交わし、最初の1冠を手中に収めた。
桜花賞馬として臨んだ2400mの優駿牝馬でも1番人気に推されたが、単勝3.8倍と抜けた人気にはならなかった。理由としては、この馬自身が一貫してマイル戦を使われていたことに加え、母ソルティビッドが短距離馬であることによる、距離不安が挙げられていた。レースは中団追走から馬群の外を伸びるも、連れるように伸びたサンテミリオンも差し返し気味の脚いろ。ゴール前はピンク帽の2頭がぴったり並んで入線し、12分もの写真判定の結果、JRAG1史上初の1着同着となった。
夏を経て、秋の始動戦は秋華賞トライアルのローズS。再び+24キロとなる494キロでの出走となるが、好位から伸びを欠いて4着に敗れた。
そして迎えた、牝馬3冠最終戦の秋華賞。中団追走から外を回して上がっていくと、前をまとめて交わしての勝利。史上3頭目となる、牝馬3冠を達成した。
続くエリザベス女王杯で海外馬スノーフェアリーに敗れての3着となり、3歳シーズンを終えた。
年が明けて4歳となったアパパネは、実績のあるマイルに矛先を向ける。牡馬相手のマイラーズCで4着に健闘して迎えたヴィクトリアマイルでは、ブエナビスタ、レディアルバローザとの競り合いを制して、5つ目のG1タイトルを獲得した。
続く安田記念では6着に敗れ、夏を経て府中牝馬Sでは14着、スノーフェアリーが連覇を達成したエリザベス女王杯では、2年連続の3着となった。そして初の海外遠征となった香港マイルで13着となり、4歳シーズンを終えた。
年明け初戦は、初の1400m戦となる阪神牝馬Sを選択。主戦の蛯名正義騎手が落馬負傷となった影響で、岩田康誠騎手との初コンビとなったが7着に敗れた。そして、再び蛯名騎手に戻ったヴィクトリアマイルで連覇を狙ったが5着。続く安田記念16着後に、父と同じく屈腱炎を発症。電撃引退となった。
引退後は繁殖牝馬となり、同じく金子オーナーの勝負服で活躍したディープインパクトとの4番仔、アカイトリノムスメが母仔制覇となる秋華賞を勝利した。2023年末現在、デビューした6頭の産駒は全て勝ち上がっており、繁殖牝馬としても十分な活躍を見せている。
(文●中西友馬)