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⑤2022年(勝ち馬ナランフレグ)
24歳松若騎手のG1初制覇ももちろん爽やかであったが、35歳丸田騎手のG1初制覇に胸を打たれたのが、2022年の高松宮記念。この年は牝馬2頭に注目が集まっており、1番人気は、5歳牝馬のレシステンシア。前年の高松宮記念でも1番人気に推されながら、ダノンスマッシュにクビ差及ばずの2着。その後、秋のスプリンターズSではピクシーナイトに敗れてまたも2着。さらには暮れの香港スプリントでも香港馬スカイフィールドに敗れて2着。目下スプリントG1で3戦連続の2着となっていたレシステンシアは、横山武騎手との初コンビで高松宮記念に挑んでいた。
2番人気は、4歳牝馬のメイケイエール。こちらは常に自分との戦いといった感じの馬で、高いスピード能力をいかにコントロールして発揮させることができるかがカギとなっていた。前哨戦のシルクロードSではそれが上手くいき、約11ヶ月ぶりの勝利を挙げて本番へと駒を進めていた。
3番人気には、これが初の1200m戦となる、朝日杯FS覇者の4歳牡馬グレナディアガーズが続き、この3頭が上位人気を集めて発走を迎えた。
レースは、好ダッシュを決めたレシステンシアがハナを切り、その外を同枠のジャンダルムがぴったりとマークする展開。メイケイエールは中団前あたりにつけるも、外枠で前に壁が作れない形。グレナディアガーズは後方集団から進めていた。前半600mの通過は33秒4。モズスーパーフレアの年と同じ重馬場発表にしては、少し速めの流れで進み、4角を回って最後の直線へと向かう。
前は、レシステンシアとジャンダルムの青い帽子2頭による追い比べ。そこに迫ってきたのが、2頭の外へと出したキルロード、その進路をなぞるように伸びてきたロータスランド、青い帽子2頭の間を突いたトゥラヴェスーラとナランフレグ、大外を伸びてきたメイケイエール。残り100mで青い帽子2頭は力尽き、5頭による争いに絞られる。横に広がったゴール前の激戦を制したのは、5頭の最内を伸びたナランフレグと丸田恭介であった。クビ差の2着にロータスランドが入り、さらにハナ差の3着がキルロードとなった。
上位3頭はいずれも、G1初制覇がかかったジョッキーたち。その火の出るような追い比べを制した丸田騎手とナランフレグのコンビは、人馬ともにG1初制覇。さらには管理する宗像師にとっても、初のG1タイトルであった。レース後のインタビューで、お世話になった宗像師の馬で勝てたことが本当に嬉しいと語った丸田騎手。その言葉に胸を熱くしたのは、私だけではないはずである。
今回紹介した5頭以外にも、過去の勝ち馬には歴代の名スプリンターがズラリと並ぶ高松宮記念。パンパンの良馬場で行われることが少なく、過去5年の馬場状態は全て重or不良というのも、大きな特徴と言えるだろう。せっかくのスプリント戦なので、極限のスピードを存分に味わいたい気持ちはあるが、今年も道悪巧者の出番となるのか。そのあたりも楽しみにしながら、レースを見ていきたい。
【了】
(文●中西友馬)