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④2020年(勝ち馬モズスーパーフレア)
ビッグアーサーの衝撃レコードVから4年が経った、2020年の高松宮記念。この年もまた、色々な意味で歴史に名を残すレースとなった。
例年通り(?)、この年も戦前の評価は混戦模様。わずかの差で1番人気となっていたのは、5歳牡馬のタワーオブロンドン。元々はマイル路線を中心に歩んでいたが、前年の夏にスプリント路線へと進むと、トントン拍子に秋のスプリンターズSを勝利。スプリントG1秋春制覇を目指して、高松宮記念に出走していた。
続く2番人気も、タワーオブロンドンと同じ藤沢厩舎所属の、4歳牝馬グランアレグリア。こちらも桜花賞を制しており、マイラーだと思われていた。しかし、前年末の阪神Cで衝撃の5馬身差圧勝。1400mに距離を詰めてパフォーマンスを上げたことから、高松宮記念で初の1200m戦に挑戦することとなった。
ちなみにこの藤沢厩舎2頭はともに、ルメール騎手が主戦を務める馬。しかし、高松宮記念は毎年のようにドバイワールドカップデーと開催日程がかぶっているため、タワーオブロンドンは福永騎手、グランアレグリアは池添騎手がそれぞれテン乗りでの騎乗となっていた。
そして3番人気は、前年のスプリンターズSでタワーオブロンドンの3着だった5歳牡馬ダノンスマッシュ。前哨戦のオーシャンSを快勝して、初のG1制覇に挑んでいた。この上位人気3頭が単勝オッズ4倍前後で拮抗した中で、発走を迎えた。
レースは、外枠からでもダッシュを利かせたモズスーパーフレアがハナを切り、セイウンコウセイが2番手につける。ダノンスマッシュとタワーオブロンドンは並ぶようにして中団を追走し、グランアレグリアは後方集団から進めていた。雨が残って重発表の馬場だったとはいえ、前半600mの通過は34秒2とスプリントG1にしては決して速くないペース。それでもモズスーパーフレアが3馬身ほどのリードを保ったまま、4角を回って最後の直線へと向かう。
直線に入っても、貯金を生かして粘り込みを図るモズスーパーフレアだったが、後続馬が徐々に差を詰めてくる。その中で伸び脚目立ったのは、クリノガウディーとダイアトニック。さらには後方待機のグランアレグリアが大外を伸びてきて、4頭による争い。クリノガウディーがモズスーパーフレアに並びかけようとした残り120m付近、間に挟まれる形となったダイアトニックは前が塞がり手綱を引く致命的なロス。そこに大外からグランアレグリアが迫ってきて激戦のゴール前となったが、わずかに先んじてゴール線を通過したのはクリノガウディーであった。
しかし、すぐに審議の青ランプが灯り、審議が行われることとなった。そして入線から17分後、クリノガウディーの降着が決定し、繰り上がる形でモズスーパーフレアの1着が確定した。ハナ差の2着にグランアレグリアが入り、そこからアタマ差の3着がダイアトニック。斜行によってモズスーパーフレアとダイアトニックに不利を与えたと判断されたクリノガウディーは、4着に降着となった。
勝ったモズスーパーフレアと鞍上の松若騎手は、ともに嬉しいG1初制覇。結果的に繰り上がりでの勝利という形にはなったが、不利を受けてバランスを崩したところから諦めずにもうひと伸びを見せたことが、悲願のG1初制覇へと繋がった。
新型コロナウィルスの影響でJRAのG1史上初となる無観客によって行われた高松宮記念は、G1史上4例目の1位入線馬が降着というまさかの結末で幕を閉じた。