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②2015年(勝ち馬エアロヴェロシティ)
キンシャサノキセキによる連覇達成から4年が経った、2015年の高松宮記念。この年は戦前から大混戦が予想されていた。1番人気は、前年の高松宮記念でも1番人気に支持されていた6歳牝馬のストレイトガール。その前年のレースは不良馬場に泣いて3着に敗れたが、秋のスプリンターズSで2着、香港スプリントでも日本勢最先着の3着と、安定した力を見せていた。
続く2番人気は、6歳牡馬のダイワマッジョーレ。元々はマイル〜中距離を主戦場にしていたが、1400mの京王杯CSや阪急杯を制覇。今回はさらに距離を縮めて、初の1200m戦での出走となった。
そして3番人気は、こちらも初の1200m戦となる4歳牡馬ミッキーアイル。前年にNHKマイルCを含む5連勝を果たしていただけに、マイルのイメージが強かった馬だが、初の1400m戦となったスワンSを勝利。マイルG1に続いて、スプリントG1奪取に挑戦となっていた。
この上位人気3頭の単勝オッズは、5.1倍、5.1倍、5.2倍とかなりの僅差。その後ろに6.5倍の香港7歳セン馬のエアロヴェロシティが続き、この4頭が単勝10倍を切る人気に推され、発走を迎えた。
レースは、人気の一角ダイワマッジョーレが出遅れる波乱の幕開け。ハナを切ったのはアンバルブライベンで、その直後にエアロヴェロシティとハクサンムーンが並ぶ形。その後ろとなる好位外めにミッキーアイルがつけ、ストレイトガールは中団後ろあたりの追走。出遅れたダイワマッジョーレは、最後方からの展開となった。その隊列のまま4角を回り、最後の直線へと向かう。
小雨が降って、馬場は稍重発表。見た目にはそれ以上に馬場が悪くなっているように見えたこともあり、直線は各馬思い思いの進路取り。逃げるアンバルブライベンが最内を通るのに対して、2番手から早々に先頭へと躍り出たハクサンムーンは、状態の良いところを選んで馬場の真ん中。さらにその外からミッキーアイルが伸びてきて、ハクサンムーンの内にいたエアロヴェロシティも、ハクサンムーンとミッキーアイルの真ん中へと進路を切り替えて伸びてくる。残り200mからはこの3頭による争いに絞られたが、ゴール前でグイッと前に出たのは、3頭の真ん中を伸びたエアロヴェロシティ。半馬身差の2着に内のハクサンムーンが入り、さらにハナ差の3着が外のミッキーアイルとなった。
勝ったエアロヴェロシティは、香港馬として初の高松宮記念制覇。前年の香港スプリントで日本勢3頭を返り討ちにした実力を、アウェーの地である日本でも遺憾なく発揮してみせた。2025年現在、高松宮記念を制した香港馬はこのエアロヴェロシティ1頭のみであるが、昨年ビクターザウィナーが見せ場たっぷりの3着。香港馬が再び高松宮記念を制する時も近いのかもしれない。