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悲願のGⅠ初勝利や降着……数々のドラマを生んだ電撃6ハロンの大激戦【高松宮記念名勝負 5選】

text by 中西友馬

高松宮記念は、秋のスプリンターズSとともにJRAに2つしかないスプリントG1であり、短距離馬にとっては上半期の大目標となっている。そんな高松宮記念では、日本競馬史に残る数多くのドラマが生まれている。今回は、数多の激闘の中から、5つのレースをピックアップして紹介する。

KinshasanoKiseki
第41回高松宮記念を制した時のキンシャサノキセキ

①2011年(勝ち馬キンシャサノキセキ)

 新設当初の高松宮杯から回数を引き継ぎ、昨年までで54回の歴史がある高松宮記念。その中で、中距離で行われていた時代も含めて連覇を達成した馬はただ1頭のみ。それが、南半球の豪州産馬キンシャサノキセキであった。

 キンシャサノキセキが初めて高松宮記念に出走したのは、5歳で挑戦した2008年。好位から抜け出して勝利を手にするかに思われたゴール前、ファイングレインの強襲に屈してクビ差の2着。その翌年も10着に敗れたキンシャサノキセキだが、6歳秋に突如覚醒。

 スワンSで重賞2勝目を挙げると、続く阪神C、明け7歳となったオーシャンSと重賞を3連勝。堂々の1番人気に推され、3度目の高松宮記念に出走することとなる。中団からレースを進めると、直線は横に広がっての追い比べ。5頭が大接戦となったゴール前の争いをハナ差制し、7歳にして悲願のG1初制覇を飾った。

 そしてこの勝利は、南半球生産馬としてJRAのG1初制覇という、歴史的な勝利でもあった。南半球産であるぶん半年産まれるのが遅いとはいえ、この時すでに7歳。それでもキンシャサノキセキは現役を続行し、8歳を迎えた翌年、4度目の高松宮記念に出走することとなる。

 この年は、中京競馬場が改修工事を行なった関係で、1200m戦となってからは初の阪神開催で行われた。好位からレースを進めたキンシャサノキセキは、2番手から先に抜け出したダッシャーゴーゴーを追い比べで競り落とすと、後続の追い上げも完封して連覇を達成。騎乗していた短期免許のリスポリ騎手は、短期免許期間最終日となっていたこの高松宮記念でJRAのG1初制覇を飾った。

 このレースを最後に、キンシャサノキセキは現役生活を引退。引退後は種牡馬として、重賞馬を多数輩出している。そして、今年デビューを控える2歳馬2頭がラストクロップ。徐々に少なくなっていく現役馬たちに、未だ達成されていない産駒のG1制覇が託されている。

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