【芦毛馬獲得賞金トップテン】「芦毛馬は走らない」。常識を覆した名馬たちの中で最も賞金を稼いだのは?
かつて日本の競馬界には「芦毛馬は走らない」という迷信があった。しかし、それが打ち破られたのは1980年代後半のこと。タマモクロスの登場を皮切りに、芦毛の名馬たちが次々と現れ、芦毛馬への偏見は払拭された。本記事では、多くのファンを魅了した芦毛の名馬たちトップ10を獲得賞金順のランキング形式で紹介する。

10位 ヒシミラクル(5億1,498万円)
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性別:牡馬
戦績:28戦6勝 [6-3-4-15]
主な勝ち鞍:2002年菊花賞(G1)、2003年天皇賞・春(G1)、2003年宝塚記念(G1)
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ランキング10位に入ったのは、2003年の宝塚記念で「ミラクルおじさん」の存在とともに話題となったヒシミラクルだ。
ヒシミラクルは、栃栗毛の父サッカーボーイとは違い、母シュンサクヨシコから譲り受けた芦毛の馬体となっている。
2001年8月にデビューするも、未勝利脱出に10戦を要した。それでも2002年5月に初勝利を挙げると、一気に軌道に乗り、9月までに条件クラスで2勝。初重賞となった神戸新聞杯では6着に入り、迎えたG1・菊花賞では、単勝オッズ36.6倍の10番人気と伏兵扱いに過ぎなかった。
だがレースでは、角田晃一騎手に導かれ、早めに進出して直線抜け出すと、最後はファストタテヤマの猛追をハナ差でしのぎ切った。単勝オッズ36.6倍の10番人気という低評価を覆す勝利で、馬単は18万2540円、3連複は34万4630円の高配当を記録。大波乱の決着となり、その名を世間に知らしめた。それまで5000万円にも満たなかった本賞金に、約1億5000万円を追加した。
続く有馬記念では11着に沈んだ。翌年に4歳となったヒシミラクルは、阪神大賞典、産経大阪杯に出走するも、ともに着外に終わった。「やはり菊花賞勝ちはフロックか…」という声が囁かれる中で迎えた天皇賞(春)。ここでも単勝オッズ16.1倍の7番人気と評価は低かったが、差し切り勝ちを収めた。
それでもまだ信用されないヒシミラクルは、続く宝塚記念でも単勝16.3倍の6番人気にとどまっていた。ところがレースでは、人気を集めたシンボリクリスエスやネオユニヴァース、タップダンスシチーら歴戦の強豪を相手に直線で外から豪快に差し切り、G13勝目を飾り、またも波乱を呼び込んだのである。春シーズンだけで、約2億7000万円の本賞金を稼ぎ出した。
この宝塚記念では、前日オッズには異変があり、単勝オッズが一時1.7倍になる事態が起こった。最終的には16.3倍に落ち着いたが、後にある人物が大口投票をしていたことが判明した。その人物が得た金額は約2億円とされ、彼は馬名になぞらえ「ミラクルおじさん」と呼ばれるようになった。
当のヒシミラクルはそんな出来事があったことなど知る由もなく、その後の京都大賞典で2着、京都記念で3着に入り約4200万円を上積みするが、結局勝った重賞は、3つのG1のみで現役を退いた。
いずれも大穴馬券を生み出したG1・3勝のインパクトと、生涯5億円超を稼ぎ出したヒシミラクルのガッツあふれる“当てにならない”走りは、人々の記憶から忘れられることはないだろう。