【騎手マニュアル】435勝のうち334勝が逃げ先行。妥協なき競馬研究家・坂井瑠星の狙いどころ
「騎手マニュアル」連載第6回。今回取り上げる坂井瑠星騎手は、2024年度JRAリーディングでは4位に輝いた若手トップジョッキーだ。レース映像の研究や血統分析を徹底し、妥協なき姿勢で競馬に挑む。彼の競馬哲学を追えば、馬券のヒントも得られるかもしれない。勝木淳氏(@jamjam_katsuki)が坂井騎手の馬券の買い時を考察する。

たまに乱ペースを演出してしまうこともあるが……

まずは過去5年間の成績を振り返ろう。2年目から長期でオーストラリアに渡り、修行を積んだ坂井騎手は2019年フィリーズレビューで重賞初勝利をあげ、その年にJRA通算100勝を達成。2020年はダービー初騎乗、ダノンファラオでJDDを勝ち、JRA42勝。そこから勝ち星を伸ばし、22年は98勝。
スタニングローズで秋華賞、朝日杯FSドルチェモアとGⅠ勝利を重ね、存在感が増した。翌年から2年連続で100勝以上。右肩上がりの勝ち星は若手に厳しい世界において、特筆すべきだろう。すくすくと育つ坂井騎手の土台は本人の妥協なき努力とオーストラリアでの経験、そして所属する矢作芳人厩舎のバックアップによってつくられた。

坂井騎手の研究の成果が位置取りにみえる。データ集計期間中435勝をあげたが、このうち334勝が逃げ先行、つまり序盤で前目のポジションにつけ、勝利に導いた。同じレースに出走するライバルたちの研究にも余念がなく、相手関係と自身の騎乗馬との力量、競馬の展開を考え尽くしたうえで、逃げ先行を選択している。その回数が坂井騎手は圧倒的に多い。
ということは、競馬においての優位性とは、ポジションであり、武器として身につけるなら先行力なのだ。この優位性は馬券を買う側もしっかり頭に刻みたいところだ。序盤で頑張ってアドバンテージを確保し、最後は自分の腕で粘らせる。これが坂井騎手のスタイル。もちろん、力づくで粘らせるだけでなく、道中のペースづくり、いわゆる押し引きといったヘッドワークを駆使し、馬にとってしんどい部分を少しでも減らし、後続の追撃を退けるなど、感覚的な部分も備えている。
ハイレベルな日本のリーディング争いを勝ち抜くには総合力が問われる。そういった意味でも坂井騎手はいよいよその資質を身につけたといっていい。
逃げ先行での好成績が坂井騎手の研究成果のひとつ。とにかく前へ行く騎手なので、たまに乱ペースを演出してしまうが、それは研究の副反応のようなもの。リスクとベネフィットを天秤にかければ、当然、逃げ先行で得られる利益は大きい。