有馬記念で有終の美を飾った歴史的名馬たち (4)はじめての中山で引退。華麗にターフを去った貴婦人
年末の風物詩となっている有馬記念。数多くの歴史的名馬たちが“有終の美”を飾って引退してきた名物レースだ。今回はそんな有馬記念の歴史の中から、ラストランの直後に引退式を挙げた名馬5頭のレースをピックアップして紹介する。四頭目はジェンティルドンナ。
④ジェンティルドンナ
オルフェーヴルがターフを去った翌年となる、2014年の有馬記念。そのオルフェーヴルと、ジャパンC史に残る壮絶な叩き合いを演じたジェンティルドンナが、ラストランを迎えていた。
史上4頭目の牝馬クラシック3冠を達成したジェンティルドンナは、続くジャパンCで一度目の凱旋門賞帰りのオルフェーヴルと対決。入線後に審議の行われた、馬体の激しくぶつかるデットヒートをハナ差で制した。翌年のジャパンCもデニムアンドルビーとのハナ差の争いを制し、史上初となるジャパンC連覇を達成。翌年にはドバイシーマCで海外G1初制覇も果たし、秋には3連覇を目指してジャパンCに出走したが、エピファネイアの4着に敗戦。前人未到のジャパンC3連覇はならず、次走の有馬記念での現役引退が発表された。
そして迎えた有馬記念。ジェンティルドンナはジャパンCで先着した2頭が出走していたことに加え、初の中山コースに対する不安要素もあり、単勝4番人気に甘んじていた。デビュー以来、常に単勝3番人気以内であったジェンティルドンナにとって、4番人気まで評価を落とすのは初めてのことであった。1番人気は、2年前の覇者ゴールドシップ。2番人気にジャパンCを制したエピファネイアが続き、ジャパンC2着のジャスタウェイが3番人気となって、発走を迎えた。
レースは、内枠を利してヴィルシーナがハナを切り、その直後にエピファネイアとジェンティルドンナが続く。ゴールドシップとジャスタウェイは、中団後方寄りから進めていた。レースが動いたのは3角手前。ゴールドシップが一気のスパートで外から前団に迫り、それに抵抗するように前もペースアップ。逃げるヴィルシーナにエピファネイアが並びかけ、その直後からジェンティルドンナも前を窺う。横に大きく広がる形で4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線に入ると、先頭は最内で粘り込みを図るエピファネイア。それを追いかけるジェンティルドンナが残り200mを切ったあたりで先頭に並びかける。この2頭の叩き合いに、外からゴールドシップ、馬群の中からトゥザワールド、大外からジャスタウェイも加わって、ゴール前は大激戦。最後にこの争いから抜け出したのは、ジェンティルドンナ。大混戦の2着争いを制したトゥザワールド以下を退け、見事にラストランを飾ってみせた。
勝ったジェンティルドンナは、父ディープインパクトに並ぶ、7つ目のG1タイトルを獲得。牝馬による有馬記念制覇は、史上5頭目の快挙であった。
有馬記念当日の全レース終了後、中山競馬場にて引退式が行われ、ジェンティルドンナはターフに別れを告げた。ジャパンC連覇のイメージから、東京コースに強い印象の馬だが、この有馬記念(中山)に加えて、桜花賞(阪神)、秋華賞(京都)と主要4場全てでのG1制覇を達成。海外も含めて、どんなコースでもしっかりと力を発揮できる名牝であった。
【了】
(文●中西友馬)
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