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有馬記念で有終の美を飾った歴史的名馬たち (2)日本近代競馬の結晶、最後の衝撃

text by 中西友馬

年末の風物詩となっている有馬記念。数多くの歴史的名馬たちが“有終の美”を飾って引退してきた名物レースだ。今回はそんな有馬記念の歴史の中から、ラストランの直後に引退式を挙げた名馬5頭のレースをピックアップして紹介する。二頭目はディープインパクト。

Deep Impact
ディープインパクト引退式

②ディープインパクト

 シンボリクリスエスの勝利から3年が経った、2006年の有馬記念。この年の注目は、言わずと知れた歴史的名馬であるディープインパクト。

 史上2頭目となる無敗でのクラシック3冠を達成。4歳になってからも、天皇賞(春)、宝塚記念、ジャパンCを勝利して、G1・6勝。国内で敗れたのは前年の有馬記念の2着だけと、まさに圧倒的な強さを見せていた。そんなディープインパクトが、G1・7勝目をかけて出走したのが、この有馬記念。既に翌年からの種牡馬入りが発表されており、このレースが現役ラストランであった。

 ディープインパクトは単勝1.2倍と断然の1番人気。単勝支持率70.1%は、有馬記念史上2位の支持を集めていた。前年の有馬記念で敗れたハーツクライはノド鳴りを発症し、大敗したジャパンC後に現役を引退。有馬記念での再戦とはならなかったが、ジャパンCで2着に入った3歳馬のドリームパスポートや、天皇賞(秋)を制したダイワメジャーが出走しており、この2頭が2.3番人気となって発走を迎えた。

 レースは、菊花賞で逃げて見せ場を作ったアドマイヤメインがハナを切り、菊花賞同様に大逃げの形をとる。離れた2番手にはダイワメジャーがつけ、ドリームパスポートは中団のインコースを追走。ディープインパクトはいつも通り後方でどっしりと構えていた。アドマイヤメインのリードは残り1000mを切った辺りからみるみる縮まり、4角手前では馬群が凝縮。ディープインパクトは馬群の大外へと出して4角を回り、最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、アドマイヤメインを交わしてダイワメジャーが先頭へと立つ。しかしそれも束の間、残り200mあたりで離れた外からディープインパクトが一気に交わすと、あとは独壇場。先頭に立ってからは鞍上の武豊騎手もほとんど手綱を動かさないままで、2着のポップロックに3馬身差をつける完勝であった。

 勝ったディープインパクトは、この勝利で7つ目のG1タイトルを獲得。着差以上に圧倒的な力差を見せるレースぶりで、ラストランでも強烈なインパクトを残してみせた。

 有馬記念当日の全レース終了後、中山競馬場にて引退式が行われ、ディープインパクトはターフに別れを告げた。武豊によって「英雄」と称されたこの馬は、まさにその名の通り、競馬ファンに大きな衝撃を与える歴史的名馬であった。

【了】

(文●中西友馬)

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