世界がざわついた…G1で樹立された日本レコード(5)そんなバカな…もはや芝2000mのタイムと思えない
競馬では「強い馬」や「速い馬」と表現されることがあるが、その二つは似て非なるもの。そこで今回は、「速い馬」に注目したい。G1の大舞台で日本レコードを叩き出した5頭をピックアップ。その歴史的な瞬間を振り返りながら、彼らが残した異次元のスピードを振り返っていく。今回は5頭目。
⑤2023年天皇賞(秋)(勝ち馬イクイノックス)

最後に紹介するのは、2023年の天皇賞(秋)。前年の3歳時にこのレースを制してG1初制覇を飾ったイクイノックスが、断然の主役。
その支持に応えて連覇を達成したこの年の天皇賞(秋)は、日本レコードによる決着となった。
イクイノックスは、その2022年の天皇賞(秋)以降1年間負けなしで、国内外のG1のみを走って4連勝。
ドバイシーマクラシック勝利後には、129ポンドのレーティングを獲得し、日本調教馬として史上3頭目となる世界ランキング1位となっていた。そんな状況で迎えた、2023年の天皇賞(秋)。もちろん人気は、単勝1.3倍の1番人気。
しかしこのレースには、イクイノックスが負けたことのある2頭のうちの1頭、ダービー馬ドウデュースが出走しており、こちらは単勝4.3倍の2番人気。ダービー以来となる両馬の再戦に、注目が集まっていた。
レースは、外枠からでもジャックドールがハナを切り、ガイアフォースが2番手。イクイノックスは直後の3番手につけ、ドウデュースは中団から進めていた。
前半1000mの通過は57秒7と、前年のパンサラッサとさほど変わらないほどのハイペース。少頭数ながら馬群は縦長となり、各馬ポツンポツンと追走する形となっていた。
その隊列のままレースが進む中、ドウデュースはジワジワとポジションを上げ、イクイノックスの直後まで浮上し、最後の直線へと向かう。
直線に入ると、各馬の鞍上が懸命に追う中、イクイノックスだけは楽な手ごたえ。真後ろまで迫っていたドウデュースを逆に突き離すと、残り300mで先頭へと立ってから追い出されると、後続を置き去りに。
後方待機組のジャスティンパレスやプログノーシスが外を伸びてきたが、最後は手綱を緩める余裕の走りで2馬身半差の快勝。
2着にジャスティンパレス、3着にプログノーシスが入り、ドウデュースは7着に敗れた。そして電光掲示板に表示されたのは、1分55秒2のタイムとレコードの文字。ハイペースの追い込み決着を3番手から抜け出し、世界レコードを更新する異次元の走りであった。
イクイノックスは、その後のジャパンカップでも4キロの斤量差をものともせず、3冠牝馬リバティアイランドを撃破。G1のみを走って6連勝を果たし、世界ランキング1位を維持したままターフを去っていった。
【了】
(文●中西友馬)
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