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断然人気の悲劇…単勝1倍台で惨敗した超名馬(2)日本列島激震の大敗…しかし、惨敗も彼の魅力のひとつ

text by 中西友馬

競馬の世界に「絶対」は存在しない。どれほどの実績を積み、どれほどの期待を背負った名馬でも、時に敗北を味わうことがある。しかし、その確信が打ち砕かれた瞬間こそが、競馬の魅力の一つである。今回は、そんな断然人気に支持されながらも馬券圏外に沈んだ、“超”がつく名馬を5頭選出。年代順に振り返っていく。今回は2頭目。

2014年宝塚記念のゴールドシップ
2014年宝塚記念のゴールドシップ

②2013年天皇賞・春

単勝1番人気1.3倍 ゴールドシップ

 2012年の天皇賞(春)は、単勝1.3倍のオルフェーヴルが敗戦。その翌年である2013年の天皇賞(春)に単勝1倍台に支持されたのが、ひとつ下の世代であるゴールドシップであった。

 前年の牡馬クラシック2冠馬であり、続く有馬記念で古馬勢を撃破。4歳初戦の阪神大賞典でも、単勝1.1倍の支持に応えて勝利を飾っていた。

 その結果、単勝1.3倍という、前年のオルフェーヴルと同じく断然の1番人気で天皇賞(春)に出走していた。

 レースは、ゴールドシップの出脚がつかずに始まったが、これぐらいの序盤の遅れは織り込み済み。サトノシュレンがハナを切り、トウカイパラダイスが2番手を追走。

 3番手のムスカテールまでの3頭で後続を引き離し、前半1000mの通過は59秒4というハイペースで進む。注目のゴールドシップは、序盤は後方4〜5番手からレースを進めていた。

 2周目の向正面に入ると、前の3頭も徐々にバラけてきてかなり縦長の馬群。大逃げの形となったサトノシュレンも3角あたりから鞍上の手が動き出し、後続各馬が徐々に差を詰めてくる。

 4角手前でサトノシュレンはいっぱいとなり、2番手からトウカイパラダイスが先頭。

 さらにその直後にフェノーメノとトーセンラーが上がってきて、ゴールドシップもその直後までポジションを押し上げ、最後の直線へと向かう。

 直線に入るとすぐに、トウカイパラダイスを交わしてフェノーメノが先頭。その外からトーセンラーが並びかけようとするが、その差がなかなか詰まらない。

 ゴールドシップは4角で前を射程圏内に捕らえていたように見えたが、伸びを欠いて離されてしまう。

 そのまま押し切ったフェノーメノが勝利し、トーセンラーが2着。さらに2馬身差の3着に外国馬のレッドカドーが入り、ゴールドシップは5着に敗れた。

 ゴールドシップはその後、引退までにG1を6勝する大活躍を果たし、「芦毛の怪物」の名を欲しいままにした。

 その一方で、2013年の京都大賞典では単勝1.2倍で5着、2015年のAJCCでは単勝1.3倍で7着、2015年の宝塚記念では単勝1.9倍で15着と、単勝1倍台を裏切ることも多かったゴールドシップ。

 特に、3連覇のかかった2015年の宝塚記念では、スタートで致命的な大出遅れを喫した。

 勝つときは恐ろしいほどに強く、負けるときはアッサリと負ける。そういうムラのあるところも、ファンに愛される要因のひとつであった。

【了】
(文●中西友馬)

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