名伯楽・藤沢和雄元調教師の天皇賞・秋制覇(4)重賞初制覇をこの大舞台で…名前と同様“もっている”競走馬
今でこそ天皇賞(秋)に挑戦する3歳馬も一般的となったが、以前は3歳牡馬の秋の目標は、菊花賞であった。その潮流に一石を投じたのが、藤沢和雄元調教師である。3歳馬だけでなく、天皇賞(秋)に滅法強いイメージがあり、実際に6勝を挙げている。そこで本稿では、天皇賞(秋)を制した藤沢師の管理馬を5頭を順に振り返る。今回は4頭目。

④スピルバーグ(2014年)
前人未到の天皇賞(秋)3連覇を達成した藤沢師にとって、9年ぶりの秋盾戴冠となったのが、2014年。この年は、3歳馬イスラボニータの出走に注目が集まっていた。
そのイスラボニータは、皐月賞と日本ダービーで1、2着の好成績。2冠を狙ったダービーではワンアンドオンリーに惜しくも敗れたが、秋初戦のセントライト記念を勝利。トライアルを勝ってはいたが、距離適性の面から菊花賞ではなく、5戦4勝2着1回と得意の東京で行われる天皇賞(秋)に照準を定めていた。
主戦の蛯名騎手はフェノーメノに騎乗するため、ルメール騎手との初コンビとなったイスラボニータは、前年2着のジェンティルドンナ、天皇賞春秋連覇を狙うフェノーメノを抑えて、1番人気に支持されていた。
レースは、カレンブラックヒルがハナを切り、マイネルラクリマが2番手につける。その後ろで、ジェンティルドンナとイスラボニータが並ぶように追走し、フェノーメノは後方集団から進めていた。前半1000mの通過は、60秒7という遅めの流れ。隊列に大きな動きもないまま4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線に入ると、前を行く2頭の外から、楽な手ごたえで並びかけるイスラボニータ。鞍上のルメール騎手は、早く抜け出しすぎないように、仕掛けのタイミングをうかがっている様子であった。
ジェンティルドンナは最内に進路を選択するも、逃げるカレンブラックヒルの内で狭くなる場面。残り300mを切ったあたりで満を持して抜け出したイスラボニータに、ラチ沿いをこじ開けたジェンティルドンナが並びかけるが、大外からその争いに一気に迫ってきたのが後方待機のスピルバーグ。
最後は内で競り合う2頭をまとめて交わして、先頭でゴール板を駆け抜けた。最後にイスラボニータを交わしたジェンティルドンナが2着に上がり、アタマ差の3着がイスラボニータとなった。
勝ったスピルバーグは、この勝利がG1どころか重賞初制覇。3歳時のダービー以来、2度目のG1挑戦で見事に大仕事をやってのけた。鞍上の北村宏司騎手は、2006年ヴィクトリアマイルをダンスインザムードで制して以来、8年ぶり2度目のG1制覇。管理する藤沢師は、9年ぶり5度目の天皇賞(秋)制覇となった。
【了】
(文●中西友馬)
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