東京競馬場を支配した“府中の鬼”(3)ダービー制覇は異次元すぎる…彼女こそ牝馬時代の象徴!
“府中の鬼”――東京競馬場を得意とする馬を指す際に使われる表現である。他の競馬場で走る時と比べ、東京競馬場では一段と力を増す馬が確かに存在する。そして、数々のビッグレースが行われる舞台だからこそ、その強さの価値は一層際立つ。本稿は“府中の鬼”と呼ぶに相応しい、東京競馬場で無類の強さを誇った5頭を紹介する。今回は3頭目。

③ウオッカ
64年ぶり、牝馬によるダービー制覇を達成したウオッカ。彼女は4歳春のヴィクトリアマイル以降、国内では東京競馬場で行われるレースのみに出走した。
東京で行われる牡馬混合の芝G1を完全制覇するという偉業も成し遂げた。これは2025年8月現在、ウオッカしか成し得ていない大記録である。
そんな彼女の東京での活躍ぶりはすさまじかったが、多くの人の脳裏に今も焼き付いて離れないのは、2008年の天皇賞(秋)ではないだろうか。
このレースにはウオッカのライバルであるダイワスカーレットが出走。さらにひとつ下のダービー馬ディープスカイも参戦し、この3頭のオッズのみがひと桁になるというハイレベルな戦いとなった。
レースは逃げるダイワスカーレットが1000m通過58.7秒というかなり速い流れで引っ張り、直線で彼女を目がけてディープスカイとウオッカが急追。
ここまでかなり脚を使ったかのように見えたダイワスカーレットはここで馬群に飲み込まれるかのように見えた。
だが、外のライバルを見て闘争心に火が点いたのか、ここでさらに加速。真ん中にいたディープスカイはやや遅れたが、ウオッカもそれに呼応するかのようにギアを上げた。
そして、最後はウオッカが僅かにダイワスカーレットを交わしてゴールイン。その差はほんの2センチだった。
ウオッカはこの勝利の後も牝馬では史上初となる安田記念の連覇やジャパンカップの制覇を達成するなど大活躍。ダイワスカーレットもその後史上4頭目、平成に入ってからは初となる牝馬による有馬記念制覇を成し遂げるなど、この時代は彼女たちが競馬界を席巻する「牝馬の時代」であった。
【了】
(文●小早川涼風)
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