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振り返っても奴がいない?思わず絶句…衝撃の逃走劇(4)何かが変…どこまで行っても追いつけない

text by 勝木淳

「逃げ」。それは先頭を走り、レースの流れを支配する諸刃の剣だ。ライバルたちに終始監視を受け、自分との戦いに打ち勝つ。そのためには鞍上の手腕も欠かせない。だからこそ鮮やかに決まる逃げは、人馬の共同作業による結晶ともいえる。今回は筆者がリアルタイムで目撃した「衝撃の逃げ」を5レースに絞り、その凄みを振り返る。今回は4つ目。

1998年菊花賞を制した時のセイウンスカイ
1998年菊花賞を制した時のセイウンスカイ

④セイウンスカイ

~1998年菊花賞~

 「京都の長距離、横山典弘騎手、逃げ」という共通項はあるものの、イングランディーレとは立ち位置が大きく異なるのが、1998年菊花賞のセイウンスカイだ。

 この世代のクラシックは三強による覇権争いが繰り広げられた。主役はセイウンスカイ、スペシャルウィーク、キングヘイロー。皐月賞はテン乗りだった横山典弘騎手とセイウンスカイが勝ち、ダービーは武豊騎手悲願のダービー初制覇をスペシャルウィークで遂げ、迎える三冠最終戦。

 セイウンスカイの人気はダービー馬スペシャルウィークに次ぐ2番人気。古馬G1級を向こうに回し、京都大賞典を逃げ切っての参戦だった。

 皐月賞馬か、ダービー馬か、それとも超良血キングヘイローの覚醒か。三強対決の最終章はセイウンスカイの先手で幕を開けた。

 レオリュウホウが追いかけようとするも、それを振り払い、前半1000mを、13.3-11.5-11.7-11.7-11.4と突っ込んで入り、速い流れへと誘う。

 キングヘイローもスペシャルウィークもセイウンスカイのスピードには付き合わない。あえて、序盤でマークされず、ライバルたちを引かせたことが勝負をわける。

 中盤は13.1-13.5とかなりペースを落とすも、後ろは動けず、差を詰められない。長距離戦の中盤でリードを保ちながらペースを落とすのは横山典弘騎手の真骨頂ともいえる。

 ラスト1000mは、12.3-11.9-11.6-11.5-12.0。早めにペースアップし、後続に物理的な差をつくり、セイウンスカイのスタミナに託した。序盤の入り、終盤のロングスパート。セイウンスカイのスピードとスタミナが見事にかみ合った競馬だった。

【了】

(文●勝木淳)

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