振り返っても奴がいない?思わず絶句…衝撃の逃走劇(2)逃げた馬も、勝った馬もあっぱれ!歴史に残る大激闘
「逃げ」。それは先頭を走り、レースの流れを支配する諸刃の剣だ。ライバルたちに終始監視を受け、自分との戦いに打ち勝つ。そのためには鞍上の手腕も欠かせない。だからこそ鮮やかに決まる逃げは、人馬の共同作業による結晶ともいえる。今回は筆者がリアルタイムで目撃した「衝撃の逃げ」を5レースに絞り、その凄みを振り返る。今回は2つ目。
②アップトゥデイト
~2017年中山大障害~
障害界の絶対王者オジュウチョウサンはJ-G1・9勝。卓越した飛越センスとスタミナで最後は中山の直線を独走する姿が印象深いが、1レースだけゴール直前まで接戦を演じた競馬がある。それが2017年の中山大障害だ。
あのオジュウチョウサンを大障害コースで唯一苦しめたのがアップトゥデイトである。2015年中山グランドジャンプ、中山大障害を連勝した名障害馬はオジュウチョウサンの登場によって、前王者と評されてしまう。2017年中山大障害はアップトゥデイトがプライドをぶつけたレースでもある。
相手はスタミナの化け物オジュウチョウサン一頭。アップトゥデイトは自分の最大の武器でもあるスピードを全面に押し出し、大逃げの手に出る。オジュウチョウサンとの物理的な差をつけられるだけつける。
その大逃げには覚悟という言葉が似合う。大障害コース大竹柵で約2秒、次の大生垣では約3秒とオジュウチョウサンを大きく引き離す。
だが、オジュウチョウサンの鞍上石神深一騎手も相手は前のアップトゥデイト一頭と腹をくくっていた。順回りに変わる最後の1周で追撃態勢を整え、ジリジリとその間合いを詰めていく。
最後の力を振り絞り、差を広げにかかるアップトゥデイト、それを許さないオジュウチョウサン。2頭の差は縮み、2頭の後ろはどんどん離れていく。
最後は2頭の一騎打ちへ。最後の直線でようやくオジュウチョウサンがアップトゥデイトをとらえ、最後は半馬身だけ前へ出た。
勝ち時計「4分36秒1」は不滅のレコードタイム。オジュウチョウサンの記録ではあるが、アップトゥデイトの覚悟がなければ樹立できなかっただろう。
【了】
(文●勝木淳)
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